芥川賞・直木賞より売れる文学賞。書店員の新井見枝香氏が、半年で一番面白かった本をたった一人で"勝手に"選ぶ「新井賞」だ。芥川賞・直木賞と同日に発表するが、あくまで独断のため、著者に受賞の連絡をすることはない。 記念すべき第1回の受賞作は、『男ともだち』(千早茜著・文藝春秋)だ。「2014年上期の直木賞候補作のなかで、自分は飛び抜けて面白いと思ったのに受賞しなかった」。芥川賞・直木賞が発表されれば、書店の棚は受賞作で埋め尽くされる。候補作は下げなければならないが、「この本に関してだけは引けなかった」。直木賞受賞作と同列に扱い、売り上げも伸ばす決心をした。目を付けたのは本の帯だ。「直木賞受賞作」に対して、「候補作」では弱い。そこで、自分の名前を冠した「新井賞」の手書き帯を苦肉の策として巻き、真剣度を伝えようとしたのが始まり。結果、当時勤務していた三省堂書店有楽町店では、直木賞受賞作を超える売り