ひところ「世界標準」だとか騒がれたインフレ目標も、本家のバーナンキが沈黙し、クルーグマンが撤回し、スティグリッツも否定して、誰もいなくなった。日本のデフレで有効なら、ほとんど同じ状況のアメリカでも有効なはずだが、それを提唱する経済学者がひとりもいない「世界標準」って何なのか。 自称リフレ派の議論には、二重に誤りが含まれていた。まず第一に、欧州の一部の国で採用されているのは、インフレを抑制するために中央銀行が通貨供給を絞る物価安定目標だが、スティグリッツもいうように、今のような非常事態に、資産価格も信用不安も無視して物価水準だけを政策目標にすることはありえない。現実にもインフレ目標を採用しているのは、ドルやユーロにペッグしていて物価上昇率が動くと為替が動いて困る小国が多い。 第二に、リフレ派が騒いだのは人為的インフレ政策で、これは物価安定目標とは理論的にも実務的にもまったく別だ。両者を混