ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (98)

  • 私人としての側面からみえてくるもの──『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』 - 基本読書

    岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。 作者: ほぼ日刊イトイ新聞,100%ORANGE出版社/メーカー: 株式会社ほぼ日発売日: 2019/07/30メディア: 新書この商品を含むブログを見る任天堂の社長だった岩田聡さんの言葉を厳選し、編集し、まとめたになる。ほぼ日刊イトイ新聞にて編集されており、構成の元になった原稿はほぼ日掲載の対談が多く、それ以外のものも「社長が訊く」から持ってきたものなので、内容の多くはWebで読めるものである。僕は岩田聡さんのファンでほぼ日も読んでいたから見覚えのない文章というのはほとんど存在しなかったが、でも抜群におもしろかった。 岩田さんが任天堂の社長になるまでの個人史を語っている「岩田さんが社長になるまで。」。岩田さんの仕事観、どうやってHAL研究所をまとめあげ、その後桁の違う大企業である任天堂でマネージメントを行ってきたのかを語る「岩田さんのリーダー

    私人としての側面からみえてくるもの──『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』 - 基本読書
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    torus1 2019/08/12
  • 北上次郎、書評家40年の軌跡──『書評稼業四十年』 - 基本読書

    書評稼業四十年 作者: 北上次郎出版社/メーカー: の雑誌社発売日: 2019/07/26メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る北上次郎氏の書評稼業40年のあれやこれやについて語られた一冊である。 それがなんであれ40年続いたら凄いもんだが書評が続くってのは、凄いわな。金銭的な実入りの大きい仕事ではないし、小説家だなんだと比べてなにか世間的な評価がもらえるわけでもない。まったく評価されないわけではないが、を読んでそれについて書いているだけともいえるのだから、まあそんなもんという側面もある。 僕もこの書評的なブログを10年以上書いているけれど、10年続いたと言うだけで凄いと言うか、自分でもよく続いたもんだなとびっくりしてしまう。これを4回、それもブログみたいに適当に書き飛ばしたって誰にも文句を言われないものとは違って、きちんと雑誌や文庫や新聞といった媒体に責任ある文

    北上次郎、書評家40年の軌跡──『書評稼業四十年』 - 基本読書
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    torus1 2019/08/05
  • 自分を支配するアルゴリズムとどう付き合っていくべきか──『Uberland ウーバーランド アルゴリズムはいかに働き方を変えているか』 - 基本読書

    Uberland ウーバーランド ―アルゴリズムはいかに働き方を変えているか― 作者: アレックス・ローゼンブラット,飯嶋貴子出版社/メーカー: 青土社発売日: 2019/07/25メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るウーバーランドとは日の有名な六人組ロックバンドの弟分──ではなく、Uberという配車アプリを提供する企業と、そのアルゴリズムがもたらす新しい経済圏のことである。Uberは、日では法的な面で規制されていて広く使われているわけではないが(uber eatsは別として)、世界65カ国に導入されており、海外旅行に行った時にタクシーの代わりとして使ったことあるわ、という人も多いのではないか。 Uberのウリは便利なタクシーの配車というよりかは(普通のタクシーより安くて、アプリで目的地の指定も支払いもできるし、便利だけど)、人確認が通って車さえ持っていれば、

    自分を支配するアルゴリズムとどう付き合っていくべきか──『Uberland ウーバーランド アルゴリズムはいかに働き方を変えているか』 - 基本読書
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    torus1 2019/07/31
  • 進化はどこまで予測可能なのか?──『生命の歴史は繰り返すのか?: 進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む』 - 基本読書

    生命の歴史は繰り返すのか?ー進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む 作者: Jonathan B. Losos,的場知之出版社/メーカー: 化学同人発売日: 2019/06/01メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る生命の進化の歴史は偶然に支配されている。たとえば、とある巨大な隕石が地球に落ちて”こなかった”、そして、恐竜がそのままの形で生存していたとしたら、今とは全く違った光景がこの地球上に広がっていたと多くの人は考えるだろう。スティーヴン・グールドは著書『ワンダフル・ライフ』の中で、仮に進化の過程を再現したならば、今とは異なる生物界が現れるだろう、といい、多くの人に受け入れられた。 だが、一方この宇宙、それに地球は一定の物理法則に支配されているから、泳ぎやすい形、動きやすい形というものが決まっている。空を飛ぶ動物はいくつかの形の翼と飛び方に収斂していくし、高速で泳ごう

    進化はどこまで予測可能なのか?──『生命の歴史は繰り返すのか?: 進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む』 - 基本読書
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    torus1 2019/07/25
  • 身体を重ねるたびに夢で訪れることができる街の地図が完成に近づいていく──『パリンプセスト』 - 基本読書

    パリンプセスト (海外文学セレクション) 作者: キャサリン・M・ヴァレンテ,井辻朱美出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/06/28メディア: 文庫この商品を含むブログを見るこの『パリンプセスト』は《孤児の物語》シリーズや『宝石の筏で妖精国を旅した少女』などの邦訳があるキャサリン・M・ヴァレンテの最新邦訳作品。記事の見出しにも入れたように、夢の中でしか訪れることができない街パリンプセトについての物語なんだけれども、一言で表現すると摩訶不思議、少なくとも相当変な作品だ。 半分ぐらいは夢の世界の話なのだから不思議の国のアリス的な摩訶不思議さがあるのは当然にしても、そもそも現実パートの話からして常に幻想的な雰囲気が漂っており、さらにはパリンプセトへ行くための条件が「身体のどこかに地図を持つものと性交すること」なので、登場人物が相手が男だろうが女だろうがやたらと色んなパートナーと性交

    身体を重ねるたびに夢で訪れることができる街の地図が完成に近づいていく──『パリンプセスト』 - 基本読書
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    torus1 2019/07/18
  • 『三体』読了者は同著者原作の『流転の地球』も観るべし - 基本読書

    三体 作者: 劉慈欣出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/04メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る『三体』を読了した流れで、劉慈欣の短篇「さまよえる地球(原題:流浪地球)」が原作となっている『流転の地球』をNetflixで観たのだけれども、これがもうたまげるぐらいにおもしろかった。映画は世界で7億ドル超え、(ただ6億ぐらいが中国らしい)とその興収の規模も凄いが、とにかく話のスケールがとてつもなくデカい。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp 何しろ、2060年ぐらいの未来を舞台に、太陽が予定より数百億年早く燃え尽きようとしており、100年後には地球を飲み込んでしまう! ⇛ このままでは人類破滅だ! ⇛じゃあ地球の赤道にそってエンジンを設置してまるごと別の恒星系に移動させよう! そのあいだ人間は地下な! みたいなスピーディな展開が冒頭のわず

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    torus1 2019/07/16
  • 絶望的な負け戦をどう戦うか──『NOKIA 復活の軌跡』 - 基本読書

    NOKIA 復活の軌跡 作者: リストシラスマ,田中道昭,渡部典子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/04メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るノキア、復活の軌跡というけれど僕の中でノキアが復活したというイメージはまったくなかった。どちらかといえば、2011年まで世界最大の携帯電話端末メーカーだったのに、まったくスマートフォン時代についていけずに失墜し、その後は携帯電話事業をマイクロソフトに売り渡し、その後どうなったのか完全に意識の外にいって消えていた存在だけれど、今は残された通信技術の会社として、フランスの通信機器大手とも合併をし、と世界の通信事業者の中でも巨大な位置を占めているんだなあ。 書は2008年にノキアの取締役に就任し、最も苦しい時期のノキアの舵取りを任されてきたリスト・シラスマによるビジネス体験記になる。復活の軌跡とはいうが、現代はT

    絶望的な負け戦をどう戦うか──『NOKIA 復活の軌跡』 - 基本読書
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    torus1 2019/07/14
  • 人口の99.9%が冬眠をするようになった極寒の世界──『雪降る夏空にきみと眠る』 - 基本読書

    雪降る夏空にきみと眠る (上) (竹書房文庫) 作者: ジャスパーフォード,Jasper Fforde,桐谷知未出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/06/27メディア: 新書この商品を含むブログを見る雪降る夏空にきみと眠る (下) (竹書房文庫) 作者: ジャスパーフォード,Jasper Fforde,桐谷知未出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2019/06/27メディア: 新書この商品を含むブログを見る『雪降る夏空にきみと眠る』はジャスパー・フォワードの久しぶりの邦訳作品にして、幻想、奇想、SF要素がてんこ盛りになった極上のオモシロ小説だ。その世界観の作り込み、プロットの巧妙さ、次から次へと明かされる驚きの事実とその演出、出てくるキャラクタはみなジョジョばりにアクが強くセリフ回しも最高と、どこを取り上げても超一級で、まず一言感想をいうなら「超おもしろい!!!!」って感じだ。

    人口の99.9%が冬眠をするようになった極寒の世界──『雪降る夏空にきみと眠る』 - 基本読書
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    torus1 2019/07/04
  • 言葉によって綴られた幻想の架空都市──『方形の円 偽説・都市生成論』 - 基本読書

    方形の円 (偽説・都市生成論) (海外文学セレクション) 作者: ギョルゲ・ササルマン,住谷春也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/06/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る言葉によって綴られた幻想の架空都市──とお題が出されれば、幻想文学ファンは息もつかせず「(カルヴィーノの)見えない都市ー!」と轟をあげると思うがここに邦訳として新鋭が誕生した。ルーマニアの作家、ギョルゲ・ササルマンによる『方形の円 偽説・都市生成論』である。計36個の架空都市が一つ数ページの中におさめられており、ページをめくるたびに想像だにしなかった都市の姿が立ち現れてくる。 一つ一つの都市の記述が短いのでおお! おお! と驚きつつページをめくっていくうちにあっという間に読み終わってしまう(紙のの長さが213ページなのもあり)。ただ、その内実はストーリーの展開というよりかは都市のスケッチに近

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    torus1 2019/07/02
  • いかにしてNETFLIXは今のような企業になったのか?──『NETFLIX コンテンツ帝国の野望―GAFAを超える最強IT企業―』 - 基本読書

    NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業 作者: ジーナ・キーティング,牧野洋出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2019/06/26メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る何年か前から、Neftlixに加入し続けている。観たいアニメが配信されているし、映画もぱんぱか追加されるし、特にこの1〜2年のことだがオリジナルの映像コンテンツが豊富で、ちと時間が余ったし、なんかみるかな、という時に観るものに困らない。フィクションだけでなくドキュメンタリー系のものが配信され/オリジナルのコンテンツを作ってくれているのもありがたく、値段が上がっても毎月課金し続けている。 日からみていると、Neftlixは洗練されたアルゴリズムと品揃え、絶え間なく投入されるアホみたいに金のかかったオリジナル番組たちに支えられ、映像配信世界の王といった感じの企業である。がし

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    torus1 2019/06/28
  • 現実とは何かが不明確になった社会を描く、森博嗣によるSF新シリーズ開幕篇──『それでもデミアンは一人なのか?』 - 基本読書

    それでもデミアンは一人なのか? Still Does Demian Have Only One Brain? (講談社タイガ) 作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/06/21メディア: 文庫この商品を含むブログを見る森博嗣によって講談社タイガで刊行されていた、人間の生殖行為による子どもがほとんど生まれなくなった社会を描き出すWシリーズが昨年完結したばかりだが、その事実上の続篇となるシリーズがこの『それでもデミアンは一人なのか?』から始まるWWシリーズである。とはいえ、1作完結路線は作でも変わらず、基的な人間関係、用語などは書でもその都度説明されるので、ここから読み始めてもそう問題ないだろう。前作と合わせて、森作品の中では明確にSFを指向したシリーズだ。 WWシリーズはどこをみているのか WシリーズとWWシリーズのSFとしての醍醐味 あらすじ的な 百年シリーズと

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    torus1 2019/06/23
  • 終わりなきモルヒネとしての量的金融緩和──『中央銀行の罪 市場を操るペテンの内幕』 - 基本読書

    中央銀行の罪 市場を操るペテンの内幕 作者: ノミプリンス出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/06/06メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る今の経済は僕にとっては複雑すぎる。デフレが続けば消費をしなくなって結果的に景気が後退するから、金利を引き下げて投資や消費を促し、それでもダメなら量的緩和だ、というのは理屈としては理解できるが、かといってその単純な理屈のままに実体経済に供給された金が反映されるわけではない(単純にやり方がまずいのもあるが)。 低金利は確かに人々を投資に駆り立てる効果があるだろうが、それが生産的なものかどうかははっきりとしない。投資が高リスクなものへと向かい、破綻が早まるだけかもしれない。金が供給されたところで、それがきちんと実体経済に反映されるところまで届くのかという問題もある。需要と供給、そこに住む人達の経済に対する認識、リスクに対する意識、

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    torus1 2019/06/16
  • 多様なイラストレーションによって彩られた、奇想小説のワンダーランド──『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』 - 基本読書

    ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書 作者: ジェフ・ヴァンダミア,朝賀雅子出版社/メーカー: フィルムアート社発売日: 2019/05/27メディア: 単行この商品を含むブログを見る書『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』は、『全滅領域』(これを原作とした映画netflixで公開されている)から始まる《サザーンリーチ》三部作で知られる作家・ジェフ・ヴァンダミアによる執筆ガイドである。書には他の執筆ガイドと異なる特徴が主に2つある。ひとつは、あらゆるページに挿入されている多彩なイラストレーションが、ガイドの内容を補完し、時にまるっと置き換えてしまっていること。その演出は多岐にわたっており、そうしたイラストレーションをぱらぱらとめくって鑑賞し、画集的に読むだけでも無茶苦茶に楽しませてくれる 。 冒頭にいきなり挟まれているSF歴史図特徴のもうひとつは、書が焦点をあてているの

    多様なイラストレーションによって彩られた、奇想小説のワンダーランド──『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』 - 基本読書
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    torus1 2019/06/06
  • Kindle読み上げでたくさん本を読む - 基本読書

    この何ヶ月かKindle読み上げを利用してけっこうな冊数を読んでいて、なかなかいいぞとかこれは難しいぞという知見が貯まってきたのでここらでいったん共有したい。Kindle読み上げとは何なのかといえば、Kindleのアプリケーションに存在する読み上げ機能を使って音声でを読むというただそれだけのことであり、別に特段のスキルも準備も必要ない(最低限スマホかタブレットは欲しいところだけれども)。設定方法については面倒なのでこの記事では解説しない。Kindle読み上げで検索スべし。 katsumakazuyo.hatenablog.com この記事では方法よりも「そもそもどんなが読み上げに向いているのか?」とかの使用感を中心にしていこうと思う。僕自身も人がやっている(勝間和代さんとか)のを見かけてやってみたのだけれども、正直最初は半信半疑であった。ていうか音声で聞いてたら読み終えるのに時間かか

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    torus1 2019/05/28
  • 脳科学・神経科学的な観点からの専門的な記述に支えられた「発想法」──『柔軟的思考 困難を乗り越える独創的な脳』 - 基本読書

    柔軟的思考 困難を乗り越える独創的な脳 作者: レナード・ムロディナウ,水谷淳出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/05/10メディア: 単行この商品を含むブログを見る変化のはやい時代、これまでになかった新しいアイデアを生み出す必要性が増している今、型にはまった考え方から抜け出し、柔軟な思考をするためにはどうしたらいいのか。レナード・ムロディナウによる『柔軟的思考 困難を乗り越える独創的な脳』は、そんな「柔軟な思考」が、解剖学的・神経科学的にどのような状態なのか、またどうすればそうした状態を維持できるのか──について書かれた一冊である。 僕は型にはまった考え方から抜け出したいと思うことがあまりない生活をおくっているのでそこまで興味のあるテーマではないのだけれども、著者のファンであり(他の著作は『この世界を知るための 人類と科学の400万年史』や『たまたま―日常に潜む「偶然」

    脳科学・神経科学的な観点からの専門的な記述に支えられた「発想法」──『柔軟的思考 困難を乗り越える独創的な脳』 - 基本読書
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    torus1 2019/05/20
  • 「偶然」を仕掛けて世界をコントロールする秘密工作員──『偶然仕掛け人』 - 基本読書

    偶然仕掛け人 作者: ヨアブ・ブルーム,高里ひろ出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/04/05メディア: 単行この商品を含むブログを見る人生は偶然によって支配されている。どこの誰の家に生まれるのか、どのような遺伝子配分になりその生活の中でどのようなエピジェネティックな変異を起こしていき、細胞の癌化はいつ進行するのか。事故に遭うのか遭わないのか、誰と仲良くなって仲良くならないのか、ありとあらゆる要素がいわば「偶然」といえ、逆に我々は人生のどの部分を「選択」できたといえるのだろうかと疑問に思うこともよくあることだ。 イスラエルで暮らす著者ヨアブ・ブルームによって、ヘブライ語で書かれた小説である書『偶然仕掛け人』は、そんな人々の人生に起こりうる「偶然」を意図的に仕掛けることで、ある二人をくっつけたり、ある人物をある職につけたり、ある人物に詩を書かせたり──といった「結果」を引き起こ

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    torus1 2019/05/16
  • エネルギーという唯一無二の普遍通貨から見た人類史──『エネルギーの人類史』 - 基本読書

    エネルギーの人類史 上 作者: バーツラフ・シュミル,塩原通緒出版社/メーカー: 青土社発売日: 2019/03/25メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る人間の営みはいかにして多くのエネルギーを得るか、また存在しているエネルギーをいかに効率よく変換するか、といったエネルギー収支に支配されてきた。そもそも文明だなんだと偉そうな事を言うまえに人間が生きることには絶対的にエネルギーが必要で、そのためには糧を体内に取り込まなければいけず、その糧は遥か遠くに存在する太陽からもたらされるエネルギーによって存在しているわけで、この宇宙全体を巻き込んだ巨大な流れのド真ん中に「エネルギー」が存在しているのである。 社会が進化するにしたがって、人間の数は増え、社会の仕組みや生産の仕組みはより複雑になり、より多くの人がより質の高い暮らしを送れるようになっていった。基的な生物物理学の

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    torus1 2019/05/14
  • 村上春樹☓柴田元幸対談集──『本当の翻訳の話をしよう』 - 基本読書

    当の翻訳の話をしよう 作者: 村上春樹,柴田元幸出版社/メーカー: スイッチパブリッシング発売日: 2019/05/09メディア: 単行この商品を含むブログを見る「当の翻訳の話をしよう」とはいうものの誰も知らない翻訳の真実がここに! ということは全然なく(当たり前だ)単なるフレーバー・タイトル*1であり、実態は村上春樹と柴田元幸が対談しているだけである。とはいえ、僕はもともと柴田村上両名のファンであるし、柴田さんの『翻訳教室』的な翻訳教授あり、ほぼ『翻訳夜話』でありと、たいへんに満足な一冊である。対談の他に、柴田さんが独演で行った講義である日翻訳史・明治篇も入っている。寄せ集め的といえば寄せ集め的である。 基的には柴田元幸さんが責任編集を務める雑誌『MONKEY』に載った二対談と、絶版になった古典を新訳・復刊する企画である村上柴田翻訳堂に載った対談が集められており、この作家はどう

    村上春樹☓柴田元幸対談集──『本当の翻訳の話をしよう』 - 基本読書
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    torus1 2019/05/12
  • (読書)日記のおもしろさについて - 基本読書

    最近note読書日記的なものを書いている。 note.mu なぜ突然日記を書き始めたのかといえば、フリースタイル的な文章に憧れがあり、これまで何度も書いてきた(何度もやめた)延長と、noteで書き心地を試してみたかったから、という状況が噛み合ったにすぎない。なのでこの日記もいずれ止まるとは思うがとりあえず今はぬるぬると続いている。で、そもそもなぜ憧れがあるのかといえば、ひとつは森博嗣さんの日記が十年以上好きだからというのがあり、もうひとつは「書評」的なスタイルから離れた形で書いてみたいという願望があるからだ。 すべてがEになる I Say Essay Everyday 作者: 森博嗣出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2014/12/12メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る「書評」は一冊ないし複数冊のについて書き、記事なり書評原稿なりには必ずそのの書名が入る。なので、

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    torus1 2019/05/10
  • 女性のみ、一日に喋れる語数が百語までに制限された社会を描くディストピアSF──『声の物語』 - 基本読書

    声の物語 (新ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: クリスティーナダルチャー,オートモアイ,市田泉出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/04/18メディア: 新書この商品を含むブログを見るクリスティーナ・ダルチャーの2018年に刊行されたばかりのデビュー長篇『声の物語』は、記事名にもいれたように、女性が一日に発話可能な語数が100語以下に制限され、女性の権利が大きく制限されたアメリカを描くディストピアSFである。 正直、最初にそのあらすじを読んだ時「そんなバカな笑」と笑ってしまった。一体何がどうしたら女性が100語しか喋れない社会がやってくるわけ? と。だが、語り手となる女性ジーン・マクレランも、かつてはそうして「そんなことになるわけがない」と最悪の想像を笑い飛ばし、選挙にも行かず、見えている危機に対処してこなかった人物として描かれており、「そんなバカな笑」と”笑い飛ばしているあい

    女性のみ、一日に喋れる語数が百語までに制限された社会を描くディストピアSF──『声の物語』 - 基本読書
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    torus1 2019/04/24