Amazon Kindle ストアで電子書籍「じゃあ、またね」を出版しました。 制服を焼却処分してから約二十年、ひとつの区切りをつけられた作品です。 いじめの被害者、加害者、そして、そのどちらでもない人たちに読んで頂けたら嬉しいです。 よろしくお願いします。 以下が、あらすじの書かれている作品ページになります。
並行世界、パラレルワールド。 呼び名は何だっていい。滑稽な話に聞こえるかもしれないが、私はそういった世界の存在を信じている。 私が生きている世界、私が生きている別の世界、そして私が死んだ世界。 宗教的な話や非科学的な話をしたいのではない。ただ、そう考えるようになったきっかけが、今まで生きてきた中で3つあった。 不思議な出来事、そこで別れた世界。 1つ目 あの頃、全てが真っ暗でどうしようもなかった。 増えていく上納に、終わらない暴力。どれだけ働いても高校生のバイトでは限界があり、家の金にも手をつけはじめていた。学校、家や街、どこにも居場所はなく、呼び出されることばかり気にして毎日を過ごしていた。 何度も心を折られた。でも、私も人を傷つけた。 手に入れた弱さを使って、たくさんの人に迷惑をかけた。だが当時の私は、そのことに罪悪感を抱いていなかった。 (これだけのことをされてるんだ。弱さを売って何
12年かかって見た景色。 12年前。 お金も、仕事も、居場所もなかった。 12年前。 「柱もねぇ、壁もねぇ、床板まともにはまってねぇ」幾三ハウスから始まった生活。 ダンボールをタンスにし、結婚記念日にウェンディーズのバーガーセットを食べていた。 逃げてきた分、1歩1歩が重かった12年。 日が落ちて、人が少なくなった街を歩く。 塔の上ではためくメープルフラッグを眺めている時、頭にあったのは、泣きながら空のスーツケースを投げつけられた日だった。 時間が進まない、病院の長い廊下。 受け取られなかった手紙。 灯りがつかない部屋。 馴染まない水を飲んで、何とか笑顔を浮かべていた日々が浮かんでは消えた。 暮れ行く街に向かい、手を合わせる。 ありがたいことに、もう生きるか死ぬかじゃない。 12年かかって見た景色。 12年かけて固めた地盤。 踏み込んだ足を弾く堅さがあれば、描いた通りに跳んでいける。 全て
満天の星をみたか 寒さの産声が響く中 黒を濃くした夜空に浮かぶ 満天の星をみたか 工場から漏れる煙も 街を埋める電波でも覆えない 内なる想いを照らす 満天の星をみたか 俺は見た 真夜中の真ん中に開けた窓から 溢れる星を確かに見た 四方に散らばり輝く星群 そのうちの一つ 東の果てに佇む光が あんたなんだと思った 理由は分からない ただ直感でそう思えた 会えなくなって随分経つけど 忘れたことは一度もない 赤いカバンをかけた背中 当時の景色はかすれていない そっちの空気はどうなんだ? あんたはあんたでいれているか? こっちのことは心配ない 色々もがいて回っているけど 今でも好きで書けているよ ため息を深呼吸に 憂鬱を動機に変えて生きてきた でも 俺は弱いから いつもあんたを探してた 一人じゃ何にもできないから あんたの姿を探してた 何もかもが変わっていくけれど ずっと変わらないものもある 社交性
Amazon Kindleストアで電子書籍「茜橋で待ってます」を出版しました。 こちらで以前発表したものに加筆して、頭の中にある思いを掘り下げました。 前回の「歩けばいい」で賞を頂いたことにより、ありがたく扉は開きました。 今まで見過ごし続けてきたタイミングの尻尾を掴むためにも、何かを待つのは終わりにして、動いた先の結果を求めてとにかく進んでいきたいと思います。 本日、5月14日(月)から18日(金)まで、こちらの電子書籍の無料キャンペーンを行いますので、よろしければこの機会に是非ダウンロードして読んでやってください。 たくさんの方の目に触れることを祈っております。 よろしくお願い致します。 以下が本のあらすじと、商品ページのリンクになります。 *** 茜橋で待ってます 今夜、7と共にいた数字の時に 茜橋で待ってます 高校卒業を間近に控えた、アオバ ヒロアキの自宅ポストに投函されるようにな
夜を照らす境内の提灯に、ラムネの瓶の中で踊るビー玉。 台風が過ぎた後に梅雨が明け、街頭に浴衣姿の人影を見かける頃になると、毎年、忘れられない記憶が蘇る。 近所の神社で催される盆踊りに初めて参加したあの夏、私は小学三年生だった。 その年、出来れば顔を合わせたくない同級生グループが旅行のため地元からいなくなることを知っていた私は、隠していたお年玉を筆箱から取り出して、紅白の灯りが揺れる高台へと急いだ。 普段は人気のない神社に鳴り響く太鼓の拍子。 今まで網戸越しに聞こえていた世界と、目の前の光景との違いに圧倒された私は、踊りの輪を避けるように手水舎の傍に行き、地面に直接腰を下ろした。 気持ちが落ち着かず、裸電球が光る屋台を回る気にもなれずにぼんやりと揺れる浴衣を眺めていると、突然、後ろから肩を叩かれた。 「炭坑節、踊らないの?」 振り返ると、薄青のポロシャツにフレームの大きな眼鏡をかけた中年の男
自身の作品である「歩けばいい」が Amazon × よしもとクリエイティブ・エージェンシーが主催する「原作開発プロジェクト」において優秀賞を受賞しました。 ドアが開き、橋がかかった事がとても嬉しいです。 作品を読んでくださった方々、選んでくださった方々、サポートしてくださった方々、そして表紙を描いてくださったミチコオノ氏、その全ての人たちに感謝します。 本当に、ありがとうございました。 受賞の報告を受けた日、結果をまだ知らない自分は仕事帰りに嫁と合流し、テイクアウト専門のチャイニーズレストランへと向かっていました。 その日、普段よりも多くの料理を注文をした理由は、夕食時に残念会をするためでした。 Amazonから結果報告がくるのならばこの日だろう、と自分の中で勝手に決めていた日が報告を受けた前日だったので、受賞の可能性はなくなったのだろうと悟り、大好きな海老ビーフンを食べて気持ちをさっぱり
チョークの粉を体に浴びて 黒板の枠を飛び越える 素足で履いたエアジョーダン 真っ白なままで高く跳ぶ 黒目の奥が本当の正体 教室のライトじゃ照らせない 椅子を蹴られてうずくまり 赤子の目線で床を這う 服に残るバニラ 頭上で割れる卵 シャツを脱いで素肌を晒し その日の匂いを削ぎ落とす 大丈夫? まだ笑ってる? 大丈夫 笑ってる ケラケラ ケラケラ 涙を流し ケラケラ ケラケラ 手を叩く 真っ赤な染みに手を振って 踏まれた影を振り払う 窓から抜け出す午前二時 消えた覚悟の背中を探す 我は石になる 我は花になる 揺れる灯りに望みを託し 両手を合わせて目を瞑る 何十回目のさようなら 震えた息が宙を舞う 黒と白 白と黒 何匹目かの猫が横切り 月が沈んで日が昇る 大丈夫? まだ笑えてる? 大丈夫 笑えてる ケラケラ ケラケラ 涙を流し ケラケラ ケラケラ 手を叩く
「おーい、君ぃー! 聞こえるかー? そんなとこで、何してるんだー?」 「あっ! お勤めごくろうさまです! あのー! わざわざ来てもらって悪いんですが、間に合ってまーす!」 「いやー、えっ? 間に合ってるって、何だろうなー? とにかくさー、そこ危ないから降りてきなよー!」 「何だかすみませーん! でも、降りる気はないんで、お帰り下さーい!」 「いや、帰らないよー! ねぇ、君ぃー! そこで何をしてるのー?」 「自分のケツを拭こうとしてるんでーす!」 「うん、そうだねー! いや、そうじゃなくて、何でそんなトコにいるのかなー? どうしてそこに便器があるのかなー?」 「あのー! それ説明すると長くなるんで、勘弁してください! とにかく、今、僕は忙しいんでーす! 放っといてくれませんかー!」 「んー、放っとけないよー! あのー、君ぃー! もしねー、お尻を拭きたいんだったら、降りてきた方がいいよー! そ
何色でもいい 見た目はそれほど重要じゃない 変な服を着たっていいよ 君がそれを好きならばね 待ち合わせは駅の前 遅刻した埋め合わせは ハーゲンダッツでいいかな? 髪切った? 切ってない? ごめん ごめん セットが面倒なら 思い切って短くしたら? 別に金髪にしたって驚かないよ 似合っても似合わなくても 君が好きならそれでいい バスに乗ろうよ たまにはいいじゃない 友達の話とか 無理にしなくてもいいよ 人付き合いが苦手なのは 僕も同じだから ねぇ 猫ってさ 夜明け前に2回鳴くよね? ずっと考えていたんだけど あれはきっと 彼らの「おやすみ」なんだよ 1回目は僕に言って 2回目は自分に言ってる 本当のところは分からないけど そう考えてから 夜更かしの回数は減ったんだ ねぇ いま全く聞いてなかったでしょ? 視線が宙を舞ってたよ 例えそうでも構わない 君と居られるならそれでいい くだらない話の埋め合
「だからよ、何でセリフを言うときに眉毛が上がるんだよ。それじゃあ演技が嘘くさくなっちまうじゃねぇか」 口に含んだ煙を上へ吐き出したチャーさんは、タバコの先をワタル君へと向けた。 「え? 上げてないですって! チャーさんの見間違えですよ。ていうか、細かすぎますよ。例え眉毛が上がっていても、誰も気にしませんて」 「バカやろう、お前は何にも分かってねぇな。話すたびに眉毛が上がる奴がいたら、どう考えたって怪しいだろ。俺が刑事だったら一発でお縄もんだぞ」 「花屋に刑事はいませんから。それに僕が演じるのは客であって、容疑者ではないです。ちょっとチャーさん、いったん僕の眉毛から離れませんか。話が全然先に進まないじゃないですか」 ワタル君は大きなあくびをひとつして、近くのベンチに座り込んだ。 誰もいない夜の公園。 園内の時計の針は、日付を跨ぐ準備をしている。 10時前にはセッちゃんの店を出たので、もうかれ
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