2004年に放送された一本のテレビ番組がある。舞台はフィリピンの農村。枝豆畑にのびた雑草をみて、高齢の日本人男性がつぶやく。「これはちょっと生えすぎだ。こんなんじゃいけない」「生えてしまうもんなんですか」。男性にそう問いかける声の主は、番組のスタッフの小野淳だ。 前回のこの欄で、国立市の農園「くにたち はたけんぼ」を紹介した(1月30日「『畑で婚活』も農業なのだ」)。プロの農家の農場とも、市民農園とも違うこの場所は、畑の隣に馬小屋があり、中央の広場では大学のサークルや婚活のイベントなどが開かれる。 運営しているのは、かつてテレビ番組の製作会社で働いていた小野淳だ。今回は小野がテレビの仕事から農業の世界に身を投じたわけと、小野が思いえがく農業の未来について考えたい。 フィリピンの大地での出会い、そして転機 冒頭の番組は、小野がディレクターをつとめたシリーズ「素敵な宇宙船地球号」のワンシーン。