すごいアイデアというのは、概要をきかされただけでもパーッと全部が見えたりするものだ。たとえばそれが小説だったとしても同じことで、舞台設定をきいた瞬間に「それは誰が書いても絶対におもしろい作品になる!」というのがわかったりすることがある。 三島賞作家の佐藤友哉が『デンデラ』という作品を発表したときにも、そんな衝撃を受けた。それはこんな設定だ。 舞台はどこかの寒村。この土地では口減らしのため、70歳になった老人を雪深い山に棄てるという風習がある。主人公、斎藤カユも70歳になったので、とうとう棄てられることになった。ところが、山の棄て場で気を失っていたはずのカユは何者かの手で助け出された。なんと、山をはさんで村とは反対側の場所に、これまで棄てられてきた老婆たち49人がひそかに生き延びて、デンデラと呼ばれる集落を形成していたのだ。 すげえ! まず、この設定だけで心をつかまれてしまう。ところが、これ