帰国事業で北朝鮮に渡った兄が病気の治療を目的に25年ぶりに日本に帰ってくる、という話。 この映画の良いところは、イデオロギーではなく人間が描かれているところだ。 主人公の家族・親戚も、北朝鮮から来た監視役も、どの登場人物も、自分のおかれた立場を自分なりに善く生きようと努めている。 少なくとも、劇中に登場する人物のなかには、誰ひとりとして悪人はいない。北朝鮮から来た監視役のヤン同志(ヤン・イクチュン)ですら、である。彼が悪い人間でないことは、序盤のコーヒーのシーンや、宿泊しているホテルのシーンや、リエ(安藤サクラ)の家を発つシーンなどから判る。 朝鮮半島分断を日本で迎え、たいした情報もないであろう状態で国籍を選択することを余儀なくされ、よかれと思ってソンホ(井浦新)を北に送った父(津嘉山正種)も、その選択が結果として悲劇につながったのは事実だが、悪人ではない。 ソンホと父が初めて一対一で向き