監督・脚本:山田洋次 原作:中島京子 山田洋次監督の新作は、恋愛に関するミステリである。 この映画の舞台となる時代は、ちょうど昭和時代の前期。昭和11年から昭和20年の終戦までである。そんな時代のとあるちょっと裕福な家庭のお話であるのだが、さて。 人と言うのは不思議なもので。 時というものを色分けして「あんな時代だった。こんな時代だった」と区分けして社会状況を「記憶」している。しかしそれは当時の時代の人からみればそこにあるのは「昨日と変わらぬように見える今日」であり、今の人間と変わらぬ今日を迎えて生きているわけである。 バブルが弾けてすぐにみんな一斉に貧乏になったわけではなく、高度経済長時代にだって貧困はあったし、公害はあったし、不景気だってあった。明日が見えないのはいつの時代にも変わりはなく、そして人と言うのは明快にすぐに変わるわけではない。昨日今日明日。すぐに時代は移ろわない。ゆっくり