21世紀を生きる私たち現代人は、社会の中で「子ども」という存在を自明であるかのように感じています。しかし、これは人類の歴史や地域を通して普遍のことではなかったのかもしれません。 1960年にフランスの歴史学者フィリップ・アリエスは『<子供>の誕生:アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』という書物において、中世ヨーロッパには教育や子供時代といった概念はなかったと指摘しています。大人と同等の言葉が使えるようになる7、8歳で徒弟制度に出されて大人と同様に扱われるまでは、1人の人間として数えられることもなかく、むしろ動物のように見られていた、というのです。その扱いはひどいもので、親が過酷な扱いをして平気で殺していたとまでいいます。それが近代的な学校教育の登場や長寿命化によって変化し、大人と異なる「子ども」という社会階層が誕生した、という見方です。 この極端な見方は人類学や社会学などに基づいた学説