有名な「贅沢(ぜいたく)は敵だ」など、昭和の戦時下に掲げられた100の国策スローガンを紹介する。書名は1937年の飯田税務署のものだ。 「権利は捨てても 義務は捨てるな」(33年)、「金(きん)は政府へ 身は大君へ」(39年)、「無職はお国の寄生虫」(42年)などなど、暑苦しいこと、この上ない。 著者は巻末で、望めばかなえられるという「念力主義」が、今も昔も日本の主流だと指摘する。さらに、戦後に「戦争はよくない」と繰り返されてきたのも、念力主義のスローガンだ、と斬り捨てる。 一見笑えるが、読めば読むほど複雑な気持ちになるスローガンの数々。平和や人権、環境、絆など「正しいお題目」に異を唱えにくいのは昔だけ? 後世の人たちに笑われないと、言い切れるだろうか。(現代書館、1700円)(佑)