たび重なるユーロ危機や難民流入、続発するテロ事件、イギリスのEU離脱決定……欧州は激しく揺れている。これまでの動向、現在の状況、そして今後の展望について描いた『欧州複合危機』の著者、遠藤乾さんに執筆にまつわる話をうかがった。 ──本書を執筆した動機をお教えください。 遠藤:欧州で度重なる危機について、一筆書きしたかった。背景にある問題は、個々の危機についての分析は散見されるけれども、それらをひとまとめに俯瞰し、通底するロジックについて考えた作品が(世界的にみて)少ないというもの。本書の出来は別として、そうした作品の必要はいまもあると考えている。 ──執筆中に苦労したことは何かありますか。 遠藤:べたなことで恐縮だが、事実をきっちり抑えること。特にテロですね。調べて書いているうちに次のテロが起きる。直後に一定の情報がメディアに出るが、その後は捜査情報が少しずつしか出てこないので、丹念に追いか