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ブックマーク / lp.p.pia.jp (10)

  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第27回)連載最終回 今のことしか書かないで(前編)

    「そう、私はリンゴチジョ。ね、町子さん、リンゴって呼び捨てにして。歳も同じ歳だし、去年まで私も金髪にしてたんだ」 「うん、わかったリンゴ。じゃ、私も町子って呼び捨てね。黒髪にはちょっと憧れてる」 「ねぇ……町子、ねぇっ、ねぇっ」 「うん、リンゴ、うんっ、うんっ」 ふたりは互いの名前を呼び合うと、握っていた手を引き合った。リンゴが階段を二段駆け上がって、そうしてゆっくりと互いの体を抱きしめあった。 同じ高さの階段に並んで抱き合うと、リンゴのほうが町子より頭ひとつ背が高かった。しかし、いずれも美しい少女たちだった。 美しい少女たちは抱き合いながら見つめ合い、意外にも気の強そうな町子の方から、とろん、と目を半分閉じて口元の力をゆるりと抜いてみせた。いきなりのキス待ち顔に一ミリも動揺することなく、リンゴは町子の金髪の頭をやわくホールドすると、そーっと唇を合わせた。 そのまま、ぎゅっ、ぎゅっとふたり

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第27回)連載最終回 今のことしか書かないで(前編)
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第25回)医者にオカルトを止められた男

    先日、筋肉少女帯のイベントを渋谷で行った。 メンバーが全員集合。でもバンドとしての演奏はせず、各々がソロまたはデュオで曲を聴かせるという形式だった。僕はこういう時に妙なヒネクレ根性が出てしまう。筋少の曲を数曲にとどめ、特撮やオケミスなどほかで参加してるバンドの曲を多めに歌った。 『そこは筋少の曲をやるべきだよなぁ』 若干思ったが、筋少ベースの内田君が登場するや西城秀樹「傷だらけのローラ」を朗々と歌い出したので『俺なんてまだまだだな』と妙な反省をしたものである。 ちなみに「ローラ」をフランス語で歌っていた。俺、まだまだだ。 全員揃ってその場面では5月に発売となる筋少最新曲「医者にオカルトを止められた男」の宇宙最速試聴会を行った。 会場に新曲を流してお客さんと一緒にみんなで聴くのである。もしかしたら中には「買うまで新曲は聞きたくなかった!」という方もいたかもしれないのだが、そこは『新曲ハラスメ

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第25回)医者にオカルトを止められた男
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第23回)彼女の登場

    推しの子分〜転生したら氣志團だった件〜」とタイトルのついた氣志團のツアーファイナルを観てきた。 驚いた。氣志團のファンが事故で死んで、生まれ変わって氣志團のメンバーのひとりとなってライブに参加する、という、音楽劇仕立てのコンサート演出になっていたからだ。 「え!? へ〜、こういうことをしているんだ」と思わず観ながら声が出てしまった。 氣志團と筋肉少女帯とはフェス・氣志團万博などで数回一緒にやっているし、彼らのツーマンライブも、神聖かまってちゃんとゴールデンボンバーとの時に観に行っている。けれどフェスでは彼らを観る余裕がなかったし、かまってちゃんとの時は、持ち時間終了になってもパソコン抱えて舞台を去らないの子君が、伐採された木のようにスタッフに横抱きにされて連れ戻された光景があまりにインパクトあり過ぎて、申し訳ないが氣志團ライブを覚えていない。 その後に行われたゴールデンボンバーとの時のは

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第23回)彼女の登場
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第22回)長い長いツアー

    連載が好評ということで、『ぴあ』さんにトークイベントを開催させてもらった。 「のほほん学校」と題して3月1日に渋谷のduoで行われた。 ゲストは漫画家のみうらじゅんさんとPOLYSICSのハヤシヒロユキさん。みうらさんとハヤシ君だもの、それはもちろんゲラゲラ爆笑大会になったに決まっている。 みうらさんは安齋肇さんと一緒に鳴門のうず潮を見に行った時、観光船に乗り合わせた修学旅行生の一団に「ビートルズさんですよね?」と言って囲まれたという話を聞かせてくれた。長髪髭の両氏を後期ビートルズさんの一体誰と間違えたものかは不明だが、みうら&安齋両氏は「若者の夢を壊してはいけない」ので、「イエス」と答え、サインにまで応じた。そして引率の先生が「ちょっとビートルズさん忙しいからみんなもう散ってぇ」と命じるまでビートルズさんに成り切ったのだそうだ。 ハヤシ君はトレードマークの黒ブチ眼鏡が実はダテであること

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第22回)長い長いツアー
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第18回)百年の孤独

    ここ数年、年末はCSの「緊急検証!シリーズ」という番組で「紅白オカルト合戦」の審査委員長を務めさせてもらっていた。 オカルトの識者たちが紅組白組に分かれ不思議トークをプレゼン、勝敗を競い合う催しの審査委員長である。バンドの知り合いには紅白歌合戦に出ているミュージシャンもいるというのに何をやっているんだね君は? との感もあるが毎年楽しかった。 ところが2023年は開催されないことになった。残念なので、代わりに新宿ロフトプラスワンでオカルトトークイベントを開催することにした。 「緊急!オーケンのほほん学校!真昼のオカルト紅白年末合戦」 ゲストに怪奇ユニット・都市ボーイズとオカルト編集者の角由紀子さんをお招きした。どちらもYouTube番組を持っていて大人気である。 角さんの番組「ヤバイ帝国」には様々なゲストが登場して毎回面白い。 最近の回には、医者に余命1年宣告されたがん患者が登場した。それを

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第18回)百年の孤独
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第17回)できるまでずっと

    40代から弾き語りを始めて最近はさまざまなミュージシャンとツーマンライブをやっている。先日は茂原でROLLYさんと共演した。 茂原駅にはロッテリアしかべるところがなかった。でもそのロッテリアではなんとラーメンを出していたのだ。嘘じゃない! 当だって。僕はそのラーメンべた。何味だったっけかな? きっと今後、全国のロッテリアでラーメンをメニューに入れる計画があるのだろう。それで実験的に茂原でまずはこっそり出していたのではないか……。 そう思いひとり納得した。ライブのMCでそのことを話したら誰も信じてくれなかった「嘘じゃない! 当だって」お客さんからは「えー??」と言う反応しか返ってこなかった。 「大槻さん、それはロッテリアとラーメン屋さんがふたつ並んだフードコートだったのじゃないですか?」と後でエゴサしたらそういったことを書いているポストがあった。 「うーん、あ、そうかも。そうだね、

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第17回)できるまでずっと
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第15回)紫の炎

    筋肉少女帯のツアー中だ。初日はクラブチッタ川崎で行われた。 その数日前であったか、ミュージシャンの某さんがご自身のライブ冒頭で「今日は歌いたくない。おしゃべりがしたい」と言うような発言をして物議を醸すと言う騒動があった。 『……それオレの格好のMCネタだよなぁ』と正直思ったのだ。でも、某さんに悪いし、そんな日もあるのだろうし、ツアー初日からそういうネタを放り込むのもどうなんだよくないぞ、やめておこうオレよ「よせよ」と「ネバーエンディングストーリー」の日語カバーにおける羽賀研二さんの歌い出しの言葉で自分を抑え、僕はステージに立った。 でも、どうにも1曲目の「サンフランシスコ」の曲中に口がムズムズしてたまらないのだ。言いたい。言いたい。 どうしても言いたくなって1曲目終わるやいなや「今日はしゃべりたくないよー!!」と開口一番大絶叫してしまった。 そこはやはり場外ザワザワッとなった。某さんには

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第15回)紫の炎
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第14回)ほな、どないせぇゆうね

    筋肉少女帯のツアー中である。 11月22日のZepp DiverCityがファイナルになる。筋肉少女帯はラウドロックバンドだ。60歳も近くなってのラウドロックのライブは体力も気力も死に物狂いである。全身全霊で、全集中して対峙しなければできるものではない。真面目なことを言うが、これは紛れもなく真実である。すべての雑念を捨て、煩悩を振り払い、ただステージとお客様と自分たちの音楽のみに専念しなければ、目指す高みにはたどり着くことが叶わないのだ。 ……で、先日、メイドカフェに行ってきた。 「雑念全然捨てとらんやないか」「煩悩しかないやろうお前」と言われたなら返す言葉もないが、行きたかったんである。ここ数年、一回行ってみたいと密かに思っていたのだ。 正確にはメイドカフェではなくてコンセプトカフェと言うのだそうだ。お店ごとに例えば「妖精さんがお店にいっぱい」とか「アイドル候補生がお給仕します」などとの

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第14回)ほな、どないせぇゆうね
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第12回)鬱フェス新宿の子犬

    先日、クラブチッタ川崎で行われた「フェス2023」に参加した。神聖かまってちゃん、上坂すみれさん、ベッド・インその他多数のアーティストと共演した。 「フェス」は、バンド・アーバンギャルドが主催している音楽フェスティバルだ。「病気のみなさんこんにちは」というキャッチコピー。さわやかな夏の野外フェスには向かないような、サブカル色が濃いというか、マニアックでコケティッシュなメンツを集めて開催されている。今年で10回目となる。 僕は10回皆勤賞で出演している。3年前の回では新しい学校のリーダーズとコラボして歌った。その時はまさか彼女らがその後世界的にブレイクするとは夢にも思わなかった。素晴らしいことである。 今年は僕があと数年で還暦を迎えるということで、赤いちゃんちゃんこを着せられて「老後じゃないもん MAXX TOSHIYORI」というアーバンギャルドとのセッションで出演することになった。マ

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第12回)鬱フェス新宿の子犬
  • 大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第2回)50を過ぎたらバンドはアイドル

    ここ二週間の僕のトピックをあげるなら、「50を過ぎたらバンドはアイドル」という筋肉少女帯の新曲が完成した。 「50を過ぎたら……」当にその通りだと思っている。存在の非日常性、不条理感、幻想度……ウソっぽさ、すべてにおいて50歳を超えたロックはアイドル的だ。 だって、そうでしょう。 来なら若者のために作られた音楽ジャンルをがっつり初老になってまだやり続けているのだ。“ヤング”という基概念と光の速さで乖離していくのは当然のことだ。社会への反発、大人への抵抗、そんなメッセージを50過ぎて叫ぶ者があるなら前者はメンドーなツイッター民だし後者はヘンなおじさんだ。 「大人は信じられない!」と憤っている輩が憤る矛先より20も30も歳上なのだ。何よりいい歳をしてライブとかやっているのがおかしいよ、ということだ。エレキギターをギュンギュン鳴らしたりドラムをドコドコ叩いたり「やかましい! 君たちは学生さ

    大槻ケンヂ「今のことしか書かないで」(第2回)50を過ぎたらバンドはアイドル
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