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ブックマーク / tanakanews.com (12)

  • モンゴルの地政学転換

    2024年9月4日 田中 宇 9月3-4日にロシアのプーチン大統領がモンゴルを訪問した。彼の5年ぶりのモンゴル訪問は、2つの意味で世界的に重要だ。一つは、ICC(国際刑事裁判所)の逮捕状をモンゴルが無視したこと。 2つ目は、そこから派生する話として、昨年から米国がモンゴルを露中敵視の国に転換しようとしていたのがどうやら失敗し、モンゴルが再び露中と仲良くしていきそうな流れの開始を、今回の訪問が示したことだ。 (Mongolia’s Embrace Of Putin Despite His ICC Warrant Exposes South Africa’s Political Cowardice) ロシア北極圏のヤマル半島のガス田から、天然ガスをモンゴル経由で中国に送るパイプライン「シベリアのちから2」を作る計画がウクライナ開戦前からある。だがモンゴル政府は今年5月、昨年来の対米接近を反映し

  • バイデンの不出馬

    2024年7月23日 田中 宇 7月21日、バイデン米大統領が11月の選挙への不出馬を宣言し、代わりにハリス副大統領が大統領候補になることを支持すると表明した。このままハリスが米民主党の統一候補になるという話が席巻している。 だが実際は、ハリスが自動的に統一候補になる制度になっていない。8月19-22日の民主党大会にかけて、党内選挙のやり直しになる可能性も残っている。 (Why Kamala Harris’ Biggest Fans Aren’t Joining Calls For Her To Replace Biden) 8月の民主党全国大会の準備として、すでに全米各州が、州の民主党員を代表する形で党大会に出席する代議員を決めており、一般代議員のほとんどがバイデンを支持すると宣誓した上で代議員になっている。 代議員は、地元党員のバイデン支持の代弁者なので、8月の党大会でバイデン以外の候

  • 米民主党でバイデン下ろしの内乱

    2024年6月29日 田中 宇 今年11月の米大統領選挙に向けたバイデントランプの討論会が6月27日に行われた。バイデンは認知症が悪化しているが、米民主党とそれに加担するマスコミ権威筋は、バイデンの認知症を全力で隠してきた。バイデンが討論会に出ると、隠蔽している認知症が米国民にバレてしまいかねない。その懸念は事前に十分強かった。 だがその一方で、トランプの人気はどんどん高まっている。何か手を打たねばならない。そういう流れの中で民主党側が、トランプを怒らせて余計な発言をさせて人気を下げる策略として、この討論会を企画した。 (Full Debate: Biden and Trump in the First 2024 Presidential Debate) (How Trump Wins The Debate – And The Election) 討論会は民主党の牙城であるCNNテレビ

  • ガザ市民の行方

    2024年5月26日 田中 宇 イスラエル軍(IDF)が5月上旬から、ガザとエジプトの国境に面したラファに侵攻している。昨年10月のガザ戦争開始後、イスラエルはガザを北から攻撃し続けて廃墟にしていき、約200万人のガザ市民のうち140万人がガザ最南部のラファに追い詰められており、イスラエルは今回そのラファに猛攻撃をかけている。 (UN Says About 300,000 Palestinians Have Fled Rafah as Israeli Forces Push Further Into the City) IDFのラファ侵攻開始から2週間で、140万人のうち80万人がラファから逃げ出したと報じられている。だが、ラファ以外のガザのほとんどの地区は、IDFから攻撃されて廃墟になっており、避難民が逃げ込める場所がない。140万人は、他に避難するところがないからラファに逃げ、過密状態

  • 英ユダヤ3重暗闘としてのパレスチナ

    2024年5月29日 田中 宇 イスラエルやパレスチナをめぐる話の隠された質は、資家ユダヤ人vsシオニスト(建国運動家ユダヤ人)vs大英帝国(英米覇権派)という三つ巴の暗闘であると、私は考えている。 19世紀末にシオニズム(ユダヤ民族主義、イスラエル建国運動)が生まれる前は、三つ巴でなく、18世紀後半の産業革命+国民革命以来の、資家vs帝国重視派の暗闘だった。 (資の論理と帝国の論理) (覇権の起源) 国際資家は、産業革命を世界中に拡大して世界各地の諸国を経済発展させて儲けたかったが、世界各地に強国ができると大英帝国の支配が崩れるので、帝国派は反対・妨害した。質的に、資家は利益を極大化する多極主義であり、帝国派は支配を極大化する一極主義である。 (チャチな資家は一国内で儲ければ満足なので帝国支持だが、国際資家は違う。英国は、分前の一部をフランスやドイツなど他の列強に与えて

  • イランとイスラエルの冷たい和平

    2024年4月20日 田中 宇 この記事は昨日の続きです。 4月19日のイスラエルからの攻撃に対し、イランは「とりあえず、すぐには」反撃しないことにした。ゆくゆく反撃する可能性を残しているが、イスラエルがあらためてイラン土に対してすごい攻撃をしてこない限り、イランはイスラエルを攻撃しないだろう。イランは「今朝イスラエルが攻撃してきたが、全部迎撃した。勝った」と豪語している。 イスラエルは依然として、シリアでイランが展開している軍事施設を攻撃している。今後もするだろう。昨日はレーダー網を空爆した。 イランは、シリア内戦でアサドを支援する名目で、イスラエルに隣接するシリアとレバノンに、傘下のシーア派民兵団の施設を展開し、イスラエルに脅威を与えている。 (Futures Reverse All Losses, Oil Slides After Iran Plays Down Israeli A

  • イスラエル窮地の裏側

    2024年4月7日 田中 宇 4月1日、イスラエル軍が、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館(の別館)を、戦闘機からのミサイル発射で破壊した。建物内で会議をしていたイラン軍(国軍より強い革命防衛隊)の最高幹部の一人、ムハンマド・ザヘディ(Mohammad Reza Zahedi)と、その部下たちが殺された。 (Multiple IRGC Generals Reported Killed In Israeli Attack On Iranian Embassy In Syria) ザヘディは、シリアとレバノンに展開する民兵団ヒズボラに武器弾薬を供給する担当だった。ヒズボラはイランの多数派と同じシーア派イスラム教徒だ。イランは、ヒズボラに武器を供給してシリアの米傀儡勢力(ISアルカイダ)やイスラエルを攻撃させ、シリアのアサド政権を助けてきた。 イスラエルとヒズボラは昔から断続的に戦闘してき

  • ロシア強化のため米国がやらせたモスクワのテロ

    2024年4月2日 田中 宇 この記事は「欧露冷戦の再開」(田中宇プラス)の関連です。 3月22日の午後8時、モスクワ郊外のクロックスシティホール(Крокус-Сити-холл、6600人収容)で、ロシアの人気ロックバンド「ピクニック」の満員コンサートの開始直前に、武装して迷彩服を着た4人のテロリスト(タジク人の男)たちが押し入って銃を乱射し、火をつけてホールを炎上させた。144人が死亡し、550人が負傷した。 (Russian FSB Chief Says US, UK, and Ukraine Could Have Been Involved in Moscow Terror Attack) 事件後、実行犯たちは自家用車で逃走した。露当局は早期(事前?)に犯人たちの車を割り出し、高速道路上の監視カメラでナンバープレートを判読するデータベースから車を追跡した。犯人たちの車は、モスクワ

  • ちゃっかり繁栄する印度、しない日本

    2024年3月6日 田中 宇 印度は、2年前のウクライナ開戦以来、米国側と非米側の両方の利権や協力関係に乗っかり、良いとこ取りしてちゃっかり独自の繁栄と台頭を続けている。昨秋には年率8%以上の経済成長をした。 (India ‘easily’ world’s fastest-growing economy – IMF) 印度は、昔から中国と国境紛争で対立・戦争しており中国敵視だ。その点で米国やG7、AUKUSから仲間と見なされ、クワッド(米日豪印)など米国側の中国包囲網に参加し、経済的・軍事外交的な利得を得ている。 また印度は昔から、イスラム主義のパキスタンと対立・戦争してきた。近年はヒンドゥ第一主義を掲げるモディ首相らBJPが権力を握り、イスラム敵視を国是に定め、アヨドヤのモスクをヒンドゥ寺院に作り替える案件や、国内ムスリムへの弾圧を続けている。 印度は、パレスチナ問題においてもイスラム敵

  • 中国に棚ボタな紅海危機

    2024年3月3日 田中 宇 「紅海危機」の長期化が必至になっている。この危機は、昨年10月から続くイスラエルによるガザの虐殺に対抗して、イエメンを統治するシーア派イスラム主義の武装政治組織であるフーシ派が11月以来、イエメン沖の紅海を航行するイスラエル友好諸国(英米欧)の船舶を無人機などで攻撃し続け、欧米のタンカーなど商船が紅海を通れなくなっている事態だ。 (Reports Say Israeli Ship "Galaxy Leader" Hijacked By Houthi Terrorists) (Houthi: Yemen to introduce ‘military surprises’ in Red Sea operations) 米英軍が紅海に出向き、イエメンの海岸地帯のフーシ派拠点を攻撃しているが、ゲリラ出身のフーシ派の兵器の多くは可動式で逃げ足が早い。フーシ派の兵器は2-

  • 消されていくガザ

    2024年2月25日 田中 宇 イスラエルが3月後半に、ガザ最南部のラファに対する格的な空爆や地上侵攻を開始する見通しになってきた。イスラエルは、イスラム世界が断月(ラマダン)入りする3月10日までにハマスが人質全員(150人ほど)を解放しない場合、ラファ攻撃を開始すると宣言している。 イスラエルはすでに散発的にラファ周辺を空爆している。ハマスは少しずつしか人質を解放しておらず、3月10日までの全員解放はなさそうなので、イスラエルは3月15-25日ぐらいにラファを格侵攻する可能性が高い。 (Israel Sets Timeline To Start Of Rafah Offensive, Issues Hamas An Ultimatum) 最南部のエジプト国境に面するラファと、その隣のハンユニスには150万人以上の避難民を含め、200万人以上のガザ市民のほとんどがいる。超過密状態だ

  • クレディスイス潰れたら欧州崩壊や米欧分裂

    2023年3月19日 田中 宇 この記事は「リーマン以上の危機の瀬戸際」(田中宇プラス)の続きです。 昨年から危機に陥っている世界最大級の銀行クレディスイス(CS)が、米国からの金融危機の波及でいよいよ潰れそうになっている。CSが潰れたら、2008年のリーマン倒産時よりはるかに大きな米欧の経済破綻になる。リーマン倒産時は、まだ金融界にも当局にも余裕があった。対照的に今は、リーマン危機後の15年間の延命策で金融界も当局も余力を使い果たしている。当局がこれ以上の延命策をやれなくなったので、シリコンバレー銀行(SVB)の破綻に始まる今回の金融危機が発生し、それが欧州に波及し、すでに脆弱化していたCSにとどめの一撃を与えている。CSが潰れたら、当局も金融界もその衝撃を吸収する資産がないので、リーマンより大きな打撃を米国側全体が受ける。 (Some Credit Suisse counterpart

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