「先生、スイカ置いておきますね。 先生が果物を召し上がりたいだなんて珍しいですわ」 「ありがとう、もう夏も終わってしまいますからね、 夏らしいことは何一つ行いませんでしたから、夏のものでも食べてみたいと思ってね」 「そりゃ、先生は毎日毎日こもりっきり缶詰で、原稿をお書きになってらっしゃるから」 「ははは、なかなかホットエントリーを書くのは難しくてね。ははは」 「私には、よく分かりませんけど」 「それにしても、あの風鈴はもう外してしまいませんか?」 「あら、まだ少しの間はいいじゃないですか、夏の余韻ですよ」 「いや、どうもあの音は、はやり苦手でね」 「でも先生、風鈴の音が本当にお嫌いでしたら、自分で取ってしまわれるでしょ? 本当は、先生夏が好きなんですよ、 それに、あの風鈴は先生がお付けになったものですし、ふふふ」 女将がそう茶化すと、 代わりに返事をするかのように風鈴がチリンと鳴った。 あ
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