医薬はいつ誕生したか 現在、日本の平均寿命は82歳を超えている。身の回りで40代以下の若い人が亡くなることを、今や我々はほとんど経験しない。 だが、ほんの100年ほど前には、日本人の平均寿命は現在の約半分に過ぎなかった(1921-1925年の平均寿命は、男性42.06歳、女性が43.20歳)。新生児の6~7人に1人は、3歳までに亡くなるという時代であった。 成人後も、結核などの病気により、若くして世を去る人は少なくなかった。たとえば樋口一葉は24歳、正岡子規は34歳、夏目漱石は49歳で、それぞれ病のために世を去っている。明治や大正に生きた人々にとって、死は現代の我々が感じているよりずっと身近であり、いつ自らの身に降りかかってもおかしくないものであった。 さらに縄文時代まで遡ると、平均寿命はせいぜい15歳程度に過ぎなかったと推定されている。現代の感覚ならば、ちょっと病院に行けばすぐ治る程度