同じ文章を何度も読み返して響きを確かめたり、言葉の順番を入れ替えたり、些細な表現を変更したり、そういう「とんかち仕事」が僕は根っから好きなのです。ゲラが真っ黒になり、机に並べた十本ほどのHBの鉛筆がどんどん短くなっていくのを目にすることに、大きな喜びを感じます。なぜかはわからないけれど、僕にとってはそういうことが面白くてしょうがないのです。いつまでやっていてもちっとも飽きません。 村上春樹『職業としての小説家』p.153 村上春樹は長編小説を書き終えたとき、「とんかち仕事」を5回以上するんだって。 1回目の「とんかち仕事」は、2ヶ月かけて原稿の頭からごりごりと大量の文章を削る作業。 2回目は風景描写を細かく書き込んだり、会話の調子を整える作業。 3回目は文章のねじを「緩ませる」部分を見定める作業。 という感じで、それぞれの見直し段階で作業内容を変えるとのこと。 このコンビネーションのもって