注目したきっかけは、「外資の森林買収」だった。 2008年夏、北海道を中心に外国資本が日本の森林を買い占めているという関係者からの問題提起があり、実態調査のための研究プロジェクトが始まった。そこから見えてきたのは、そもそも土地の所有・利用を行政が正確に把握しきれていない日本の土地制度そのものの問題だった。 外資による森林買収の9割が集中する北海道は、2012年3月、水源地域の土地売買の事前届け出を義務づける条例を全国に先駆けて創設。周知するため、まず不動産登記簿上の土地所有者4166人に通知を発送した。 ところが、そのうち45%に当たる1881人分が「宛先不明」で道庁に返送されてくる。道は市町村に協力を要請し、固定資産課税台帳、住民基本台帳などを手掛かりに所有者の転居先や相続人の調査をしたが、判明したのは返送分のうちわずか27人だった。 土地とは、個人の財産であると同時に、人々の暮らしの土