沖縄戦での集団自決の教科書記載をめぐる問題は、従軍慰安婦問題同様、大きな論争を呼びそうである。 今回、沖縄で2~3万人集めたデモと、それに反対する層との間ではひとつだけメタ合意が発生している。それは「真実(史実)とは何か?」という問題設定をしていることである。 今回は「(文章化された)記録(=史料)はないが、当事者の証言はある」という事態だが、このとき「記録がないから事実はない」とするか、「証言はあるから事実もある」とするか、という対立が生じている。「史実(=真実)」をめぐる争いとは、「客観的事実判断」を基準としそれを採用するフェイズにおいて生じる。 しかしながら、「客観的事実判断」は常に価値判断から自由ではない。「A」と「B」という「客観的事実」が“あった”としても、「A」を描写し、「B」を描写しない時点で「価値判断」を採用している。誰もが納得できる「客観的事実判断」などはありえない。