1994年上梓、純度の高い傑作。 時は第二次大戦前後。舞台は米国ワシントン州の西にある孤島サン・ピエドロ。島民は約5千人、1920年代には多くの日本人が移住し農業などに従事していた。今では、その二世らも大人になり米国籍を取得できる日を待っていた。だが、大東亜共栄圏という虚妄の大義を掲げ、覇権主義をひた走る〝祖国〟によって望みは打ち砕かれた。1941年12月8日、真珠湾攻撃を発端に米国との無謀な戦いを始めた日本。敵国の人間として在米日本人は強制収容所へと送られた。二世男子の少なからずは米兵として従軍、主にヨーロッパ戦線で対ナチスの地獄を味わう。その命懸けの〝愛国心〟の発露も虚しく、帰還した足に絡みついたのは依然として根深いレイシズムという鎖だった。 日本敗戦から10年が経った1954年9月16日。沖一帯が濃い霧に覆われた早朝、漂っていた漁船から刺し網漁師カール・ハインの死体が発見された。当初
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