サッチャーが言及した「家族」の意味 「社会なんて存在しません」──これは、マーガレット・サッチャーの「新自由主義宣言」として有名な引用文だ。個人を守ってくれる社会なんか存在しない。個人は自由市場の中で選択と競争をして生きていかなければならない。それがサッチャーのメッセージだった。 1987年にサッチャーが三選を果たした際に、雑誌『ウーマンズ・オウン』に掲載された談話である。正確に引用すると次の通りである。 社会なんて存在しません。存在するのは個人としての男女、そして家族だけです。 新自由主義的な個人主義の宣言としてよく引用されるこの台詞だが、社会は存在しない、存在するのは個人だけだというのにとどまらず、サッチャーが続けて「家族」に触れていることの意味は、これまであまり考えられてこなかった。 イギリスの階級の諸側面を考え、それが現代日本の私たちに何を教えてくれるかを考えてきた本連載であるが、
![家族が「贅沢品」になる時代……誰が“個人”を守るのか?(河野 真太郎)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/6f807c12ce8e994153bf0a9fc563d92c55b5e298/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fgendai-m.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2F9%2F7%2F1200m%2Fimg_9714c2eca3350422866e926aa744b2fe107934.jpg)