幾多の困難を乗り越えて明治43年に全線開業を成し遂げた江ノ島電気鉄道は、皮肉にもその翌年の44年10月に、神奈川県内屈指の電力会社横浜電気に吸収合併され、10余年の社歴に幕を降ろしました。さらに、この横浜電気もまた大正10年5月に、より規模の大きな東京電灯(東京電力の前身)に吸収され、江ノ電は東京電灯江之島線と呼ばれるようになりました。資本主義が浸透しつつあった当事は、こうした弱肉強食的な合併が繰り返されていたのであります。一方では、事業の拡充により資力を伸ばしていた事業家たちがその余力で新たな会社を設立し、関東大震災後の経済復興に貢献していましたが、大正15年7月10日に設立された当社もこうした中のひとつと言えましょう。 当社の起源は、大正10年6月に東海土地電気の名で茅ヶ崎~鵠沼間(後に茅ヶ崎線と命名)および辻堂~辻堂海岸間の鉄道敷設免許を取得したころに遡り、当初は付帯的にリゾート開発