対幻想(ついげんそう)とは、日本の思想家・吉本隆明の造語であり、共同幻想、自己幻想と並び、人間の幻想領域を構成する1カテゴリーである。 対幻想のもっとも根本的な定義は、「男女の肉体的、動物的な生殖行為や子育てから疎外された幻想」と言う意味である。ちなみにここで言う疎外とは、そこから派生するがそこには還元されないと言う意味である。吉本はほかに、対幻想の定義として以下のものをあげている。 家族の本質 吉本は、対幻想は家族の本質であると述べている。単純な血のつながりだけではなく、対幻想が存在するから家族や家庭は成立するのである。吉本は、人間はもともと社会的存在ではないが、不可避的に社会を作り出してしまった。もし許されるのなら、人間は家族を連れて、どこかなんのしがらみのない世界まで逃げ出したいと思うだろうと指摘している。吉本は、対幻想領域としての家族は、冷酷で抑圧的な共同幻想から薄弱な自己幻想を守