「富山県と同じくらいの面積の耕作放棄地」 これは、メディアが耕作放棄地について取り上げる際の決まり文句だ。全国で農地の荒廃が進み大変だと言いたいようだが、実のところ耕作放棄地の問題には、国による自作自演の面もある。戦後一貫して農地の造成を続けてきたからだ。 61年で113万ヘクタール農地を造成 耕作放棄地は2015年時点で約42万3000㌶あり、富山県と同じくらいの面積になる。現在はもっと増えているはずだが、国が5年ごとの農林業センサスで、20年から耕作放棄地を調査対象から外したため、把握できなくなってしまった。耕作放棄地は病虫害や鳥獣害の温床になり得るので、増加は望ましくないとはいえ、致し方ないところがある。 中山間地を訪れて周囲を見渡せば、目に入ってくる山の多くが元は農地だったりする。スギやヒノキの林になっている斜面に分け入ると、かつて棚田があった痕跡の石垣が残っている。何十年も前に耕