出典:岩波書店「科学」2008年2月号 Vol.78 No.2 連載ちびっこチンパンジー 第74回 松沢哲郎『直観像記憶と言語のトレードオフ仮説』 数字の直観像記憶 チンパンジーの子どもは,直観像記憶(eidetic imagery)と呼ばれる特殊な記憶能力をもつことがわかった。チンパンジーの子どものほうが人間のおとなよりも,ある種の記憶課題において優れていることが実証されたのである。井上紗奈さんとの共同研究である(1)。 チンパンジーの子どもは一瞬見ただけで,どの数字が,モニター画面のどこに出てきたかを記憶できることがわかった。いちばん成績のよかったアユムは,1から9までの9個の数字を,約0.7秒でほぼ正確に記憶できた。人間のおとな(大学生)の場合,こうした速さや正確さではできなかった。ほかの2人の子ども(クレオとパル)も,正答率こそ人間のおとなの範囲内だったが,より速くできる。 新たに