<女性やLGBTが社会的な承認を得て地位を向上させていく中で、「没落」していった男性たちの背景について> 自分たちの居場所がない、声も無視されている...。産業構造やメディア環境、そして価値観の変化についていけない苦境。 気鋭の批評家・藤田直哉の最新刊『現代ネット政治=文化論: AI、オルタナ右翼、ミソジニー、ゲーム、陰謀論、アイデンティティ』(作品社)より「第一部 ネット時代の政治=文化」を一部抜粋。 2010年代を総じて評するならば、人種差別、民族差別、女性差別などの問題は解決に向かい、素晴らしい成果を挙げ進歩した時代だったと言える。 筆者は、様々な差別や抑圧を大変憎み、「有害な男性性」の有害さに大変怒りを感じているので、この「進歩」を基本的に歓迎している。 だが、アイデンティティ問題が前景化した結果、氷河期問題、格差、階級差などの問題が相対的に放置されることになってしまい、そのことが