現憲法は連合国軍総司令部(GHQ)によって原案が示された、いわば戦勝国に押しつけられた詫(わ)び証文で、主権国家としては致命的な欠陥憲法というほかない。ただ、問題はそのことを今の国民がどれほど深刻に受け止めてくれるだろうか、ということだろう。新憲法の要綱づくりという今まで経験したこともない仕事に向き合いながら、そんなことを考えている。 憲法の欠陥は、社会のあらゆる分野に及んでいる。議論のたびにそう思う。当然といえば当然だが、憲法の欠陥がもたらす弊害は結局いつか、私たちの暮らしに実害となって降りかかってくる。憲法は決して「神棚」の上の話ではないのである。 東日本大震災のさい、憲法に非常事態条項がないことがクローズアップされた。一刻の猶予も許されない緊急事態のなかで、私権を制限してでも、優先して解決されるべき局面や国家的課題といったものは存在するはずだ。ところがわが国では戦後、国家による強権発