「工場見学に来る小学生や中学生に『働くって、どういうこと?』と投げかけてみるんです。すると『会社に行っておカネをもらうことです』って。今の大人たちがそう言っているんですね。でも僕は、働くとは、人に必要とされ、人の役に立つことだと思います」 働くとは何か。その問いを考え抜いてから仕事に就いた人が、今どきどれだけいるのだろう。世の流れから外れないように受験をして学校に入り、卒業が近づくと待遇やら評判やらを見比べながら就職活動をした人も少なくないはずだ。その点、筆者も胸を張れず、働くとは―と真剣に考えた記憶もない。社会人になってからの経験や出会いによって、価値観らしきものが育ってきたにすぎない。 大山泰弘(おおやま・やすひろ)1932年生まれ。父が興した日本理化学工業を74年に継いで社長となり、2008年より現職。現在、社員74人の7割超が知的障害者。(撮影・田渕睦深) 日本理化学工業(神奈川県