百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎, 2018)には「隠しテーマ」があると、関係各位から盛んに主張されています。著者御本人は、第十二章以降が重要であるとことあるごとに声高に叫んでいます。 この二点を勘案すると、第十二章以降で盛んに強調されている「朝日新聞叩き」や「中国・韓国脅威論」などが主要テーマ(「隠し」と言うのは大げさ)なのでしょうけど、むしろ「通史」というスタイルで貫かれている課題としては「平和ボケ」に対する注意喚起と、それに基づく「憲法九条改正」こそが重要なテーマであるように思えます。 刀伊の入寇と平和ボケまず、この「平和ボケ」への批判は、「刀伊の入寇」を紹介する記述から確認できます。「刀伊の入寇」という聞きなれない事件は、平安時代末期後期に、女真族(満洲民族)を中心とした海賊が日本沿岸部に襲来して略奪行為を繰り返した事件です。 この時の朝廷の対応を『日本国紀』は厳しく非難します。 この