何億年もの間、ほとんど変わらない姿で現存し、「生きた化石」とも称されるシーラカンス。このほど、東京工業大学、国立遺伝学研究所、東京大学などによるチームが、約27億対に及ぶ全ゲノムの解読に成功した。みえてきたのは、シーラカンスの際立った特異性と、脊椎動物の陸上化に関わる分子メカニズムの一端だ。 –– なぜシーラカンスのゲノム解読を進められたのですか? 二階堂: 私は生物の適応進化に興味があり、1997年に、学部生として岡田典弘教授(現 東京工業大学名誉教授・国際科学振興財団)の研究室に入りました。岡田教授は、DNAの配列をもとに生物の系統を調べる分子系統学の第一人者で、魚類から哺乳類に至る複数のグループについて、系統関係の解明に成功していました。その中で私たちは、「クジラは、陸上に住む哺乳類が海へと戻っていった生物で、系統的に最も近いのはカバである1」といったことを突き止めました。 一方で、