人間1人ひとりの個性や人格、能力を築いているのは、親から受け継いだ遺伝に影響される部分と、経験や環境が強く作用する部分がある。 遺伝については、20世紀最大の発見のひとつ「DNAの二重らせん構造」の発見を契機に科学的な解明が進み、一般的な知識として知られるようになった。その知識が広がったため、我々は「自分たちを支配しているのは遺伝子」と考えがちだ。 だが、生まれた後の努力や経験、置かれた環境によっても、人は変わることができる。生まれた後に我々をどう変えているのか――。近年になってそのメカニズムに光が当たりはじめている。 そのメカニズムの主役が「細胞」だ。 一般に、細胞は、「体を構成する部品」と捉えられることが多い。DNAという設計図を使って作られる部品だと。しかし、その認識が間違いであることが近年の研究で明らかになってきた。1つの自律した生命体のように、自ら周りを探り、状況を判断し、自らを