『酔っぱらいの歴史』(マーク・フォーサイズ 著/篠儀直子 訳) 人類、酔っぱらい過ぎである。 なにしろ有史以前から、いや、人間が木から下りて二足歩行を始めた時から、人類は酔っぱらっていた。最初は、熟して発酵した果物。次に、大麦と水を混ぜた原始ビール。そこから人類は糖分やビタミンBを摂取し、アルコールで殺菌された飲料を得ていた。つまり酒は栄養と安全を満たすための必需品であり、我々は酒を飲むために進化したのである。 そんな大胆な仮説から始まる本書は、時代や場所によって変化する酔っぱらいの姿をひたすら追っている。女主人の経営する酒場でスパイスや子ブタと引き換えにビールを飲むシュメール人、神を讃えて暴飲と嘔吐と性交を繰り返す古代エジプト人、ギリシャ人は形式張った酒宴を開き、古代ローマ人は富と力を誇示しながらワインの薀蓄を傾ける。他方、古代中国では、聖書では、修道院では、イスラム社会では、ヴァイキン