原稿を書くために藤原正彦『日本人の誇り』(PHP新書、2011年)を読んでいて、こんな一節に出くわした。 著者がお茶の水女子大学で教鞭をとっていた時、一年生対象の読書ゼミをうけもったという。そこで「日本はどういう国と思いますか」という質問したところ、ネガティブな答えしかかえってこなかった。 藤原センセイは「日本中のほとんどの若者が自国の歴史を否定しています。その結果、祖国への誇りを持てないでいます。意欲や志の源泉を枯らしているのです」とまとめた上で、さらにつぎのように質問したという。 「それでは尋ねますが、西暦五○○年から一五○○年までの十世紀間に、日本一国で生まれた文学作品がその間に全ヨーロッパで生まれた文学作品を、質および量で圧倒しているように私には思えますがいかがですか」 これで学生達は沈黙します。私はたたみかけます。 「それでは、その十世紀間に生まれた英文学、フランス文学、ロシア文