文庫になるのは、古典とはいわないまでも、年月がたっても「腐らない」本が普通で、IT業界の本が文庫になるのは異例である。『ウェブ進化論』が大ヒットしたおかげだろう。本書の主要部分は、1996年から2001年までに書かれたエッセイだが、最後に現在の状況について書いた「文庫のための長いあとがき」がついている。先にあとがきを読み、そこに参照されている本文にリンクするように読めと書いてあるが、これは読みにくい。 本文にも1ヶ所だけ、グーグルが出てくる。「すばらしい検索技術をもっているが、どうやって資金を調達すればいいかわからないベンチャー」という2001年の状況だ。この年は、ドットコム・バブル崩壊の翌年で、シリコンバレーから資金が急速に引き上げられていた。検索も金にならないということで、多くの検索サイトは自社開発をやめ、グーグルのエンジンを使い始めた。こういう状況で、グーグルは逆に自社技術の開発に