■世代間格差の構造を批判 憤激の書だ。怒りの矛先は老人、というよりも老人を優遇してきたこの国の政治だ。 週刊誌「アエラ」の記者である著者は財政や社会保障の問題に取り組む中で、その本質に気付いた。年金、医療、介護、それらを支えるための国債を含む1千兆円もの公的債務。いま日本が抱える難題を遡(さかのぼ)れば、すべて高齢者の優遇に行き着く。本書はそんな視点から網羅的に問題を炙(あぶ)りだした本だ。 国民年金の保険料は若者の未納率が問題視されるが、加入者の平均年収は159万円で受給者のそれは189万円。「貧乏な若者が、自分より豊かな祖父母に仕送りをしているようなものです」と著者は苦言を呈す。 75歳以上の一人あたりの医療費は現役世代の5倍に及び、年金は支給額53兆円のうち約50兆円を現役世代が担っている。問題は現在に留まらず、介護保険は近い将来20歳に加入が繰り上げられるだろうとも予想する。増大す