どこまでも、誠実な話だった。 どこからどうみても、だらしなくてどうしようもない劇作家が主人公で、恋人を不幸にしていく話。冷静に見ればそういう話。 ただ、そんな人間に対して、どこか"羨ましい"という気持ちを抱かせる。 僕も"芸術"に携わる大学を卒業し、今も広義の意味では"ものを作る"仕事をしている。 プロとしてやる以上、お客さんの意向もあるし、〆切もある。その中で、数々の"妥協"をしながらものを作っている。 作り上げるものに関しては、大学生の頃の自分よりはるかにクオリティーが高いし、周りからもそれなりの評価は受けている。でも、"大学生の頃の自分"が今の自分を「スゴい」「羨ましい」と感じるだろうか?というモヤモヤは常につきまとっている。 「あの頃の自分」や「芸術」や、つくりだす「作品」に対して、果たして今の自分は"誠実"といえるのか? そういう思いを抱えながら生きている自分にとって、本作「劇場