C++ の基本書のひとつ。必ずしも初めて知ったことばかりでもなかったが、非常に系統的に重点が網羅されている点では重宝する内容になっている。全体的に訳出が固めな気もするが、まあこんなものかもしれない。特筆すべきは、トピックのひとつひとつが極めて理詰めで説明されているため納得しやすく、(一部は除くが)長さもあまり長くない点である。本書の帯にある「すべての C++ プログラマ必読 !」という謳い文句は事実であり、本書の読む時間を惜しんで C++ を書いても、却って意味不明なバグに見舞われて時間を食うのがオチである。最低限、本書の扱う C++ という言語を効果的に使い落し穴にはまらないためのポイントは理解した方がいいだろう。文字通り、実戦書であり、C++ 使いを自ら任ずるならば必読書である。 とはいえ、この本は読書ノート化に非常に時間のかかった本でもある。インターネット的にいえば不完全な状態でもど
Effective シリーズの Perl 版。通常 Perl の本といえばラクダ本やリャマ本の版元であり Perl の作者たる Larry Wall も勤めるオライリーといいたいところだが、この本は別である。書名からも分かるように Scott Meyers の 『Effective C++』 と同様の体裁となっており、多岐にわたる機能を持った Perl の勘所を要領よく解説している。そのため、どちらかというと話題の幅広さに重きを置いた形式になっている。まあ、今なら類書が当のオライリーからも『Perl クックブック』として翻訳されているし、これで飽き足らないならば黒ヒョウ本(『実用 Perl プログラミング』)がある。 大抵、言語の文法だけでは実用レベルのプログラムは記述できない。そこで登場するのが、言語特有の落とし穴を解説し、ポイントに絞って解説する、この手の本となる。(それゆえ、ある程度
なかなか手際よくプログラミングにおける要点や姿勢というべきものを広範に整理した好著。ちょうど自分なりのプログラミングに対する指針というか、次に何に着目して取り組むべきか――を得たかったところだったので、なかなかタイミングのよい本だった。個々の項目だけならば既に知っているものばかりなのだろうが、何よりも細かい説明が延々と続くわけではなく、要諦を押さえた密度の濃い点がよいと思う。個人的には、後は変数命名の指針などがあるとありがたかったが、そのくらいは自分で調べるべきなのだろう。 抄録 vii/ix/xii これまでプログラムの本の多くは言語設計者などによって書かれることが多く、プログラミング言語を使った作業全体までを視野に入れたものは少なかった。本書では、それを打破するための、パターン(解決策)のシステム(系)に則るプラグマティックな方法論を提示する。即ち、幅広いバックグラウンド(理論)と経験
用語集 意思決定・認知科学の分野からピックアップしました。 個人的な好みに基づく、限られたレパートリーです。
蓮實重彦『物語批判序説』 ブルックナー交響曲第9番 index 批評コンビニ幕の内(8) 蓮實重彦『物語批判序説』(第1部) 蓮實重彦『物語批判序説』(第1部)は、読み終えてみれば、フローベールの『紋切型辞典』をめぐる評論という形をとっている。しかしその始まりは、こうだ。 《それを博学と呼ぶには彼の知識はあまりに貧弱であったし、ましてや言語学的な卓見を誇りうるほど事情に通じていたわけでもないのに、一人の男が、あるとき、不意に辞書の編纂という途方もない計画を思いたち、知人や親しい仲間たちに向って、その構想をぽつりぽつりと洩らしはじめる。そんな身のほど知らずの着想を無理にも思いとどまらせる友人がひとりもいなかったところをみると、誰も、その完成を本気で信じてなどいなかったのだろう。事実、辞典編纂の知識も経験もないこの無謀な男は、その構想を実現させる以前に死ななければならなかった。彼の死は、いまか
ちくま学芸文庫版の解説(野家啓一「「物活論」の復権」)のまとめ.【 】内はまとめというより解釈など. 続きを読む 本書の著者である大森と同様,フッサールもまた近代科学に対する根本的な異議申し立てを行い,世界観上の「包括的態度変更」を迫る.フッサールは近代科学の本質は「理念的数学化」にあるとし,そのルーツはガリレイによる「自然の数学化」であるとする;フッサールは『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』においてガリレイに端を発する「自然の数学化」を批判的に考察し,数学的シンボルという「理念の衣」を廃棄して直接的経験のフィールドである「生活世界」に還ることを求める.この問題提起は密画的世界観( = 理念の衣)にたいする略画的世界観( = 生活世界)の根源性を主張したものとみることもできる. 【参考:id:somamiti:20050807#p1】 しかし大森はフッサールの近代科学批判をさらに批判
吉本隆明著・心的現象論を読む 心的現象論序説(試行15号~28号までの連載分)Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ感情 Ⅴ発語&失語 Ⅵ夢 Ⅶ心像(イメージ) Ⅷ眼の知覚論 Ⅸ身体論 関係論 了解論 試行 47 68 69 70 71 72 73 74 感想 ごあいさつ 吉本隆明(よしもと たかあき)氏が自ら主催する「試行」という同人誌で連載されていた「心的現象論」を読むという企画です。本になってる「心的現象論序説」は試行の1965/10/25~1969/8/25 15号~28号までの分で、それ以降は、まあ、図書館等を利用してコピーをとってきた次第で、著作権云々でクレームがくれば、謝罪してHPを消すというまあ、粗末なものなのですが。試行の廃刊時に載った心的現象論をみても、最後は(未完)で終わってますから、コピーまで含めて序説といえば序説なのですが、あえて28号分まで収めた書籍と区別する意味で「心的現象論」という
北田暁大 20031025『責任と正義 リベラリズムの居場所』勁草書房 398,36p ISBN:4-326-60160-4 [amazon]/ [bk1] 目次 なぜ今、リベラリズムなのか―まえがきにかえて 第一部 責任の社会理論 responsibility socialized 第一章 コミュニケーションのなかの責任と道徳 一 問題としての「コミュニケーション的行為の理論」ハーバーマス理論の再検討 [1] 発語内行為の構造 [2] 発語内行為はいかにして成立するのか 二 行為の同一性と責任 構成主義の行為理論 [1] コミュニケーションと行為 [2] 共同の論理と協働の論理 第二章 構成主義的責任論とその限界 一 行為の責任・再考 構成主義的に「責任」を考える [1] 構成主義テーゼから「強い」責任理論へ [2] 「強い」責任理論の存在証明 二 ラディカルな責任のスタイル ポストモ
その1 平凡社『月刊百科』 1998年2月号 No.424、14-15頁より。 「「知」の欺瞞について」のページへ 本稿の執筆に取りかかろうとしている今、97年の年の瀬である。米国の思想界でアラ ン・ソーカルの「悪戯」が物議を醸してからそろそろ二年、フランスでソーカル教授 の本『知的ぺてん』 (Impostures intelectuelles) が刊行されてからでも、早くも 三ヶ月が経過しようとしている。それにもかかわらず、米英仏の論壇をあれほど騒が せているソーカル事件、わが日本では――もしかすると私が寡聞だというだけのこと かもしれないが――いっこうに話題にならない。論評はおろか、報道さえおこなわれ ない。なぜだろう? ニューヨークやパリの知的流行には聡いはずの「現代思想」フ リークたちは、本当にソーカル事件のことを知らないのか。それとも、知っていなが ら――党派的・戦術的に――黙殺
Last Modified: Sat Jul 20 15:46:16 JST 2002 English version / 黒木のホームページへ 内容: 検索、Web Sites、記事、Sokal&Bricmont、Social Text、参考資料 このページに関する感想や情報は掲示板に書いてください。 ★『「知」の欺瞞』関連情報も見て下さい!★ 2000年5月24日に『「知」の欺瞞』がついに出版! 本の入手を待ち切れない方は以下を読んで予習しておこう: 堀茂樹、「きみはソーカル事件を知っているか?」、平凡社『月刊百科』 1998年2月号 No.424、14-15頁と1998年3月号 No.425、42-43頁より。 アラン・ソーカル、「ソーシャル・テクスト事件からわかること、わからないこと」、田崎晴明訳、in A House Built on Sand: Exposing Postmod
分量的に本書の大部分をなしているのは、特定の論者(ラカン、クリステヴァ、イリガライ、ボードリャール、ドゥルーズとガタリ等々)の特定の文章――科学用語を乱発した個所――について、それが物理学や数学の無理解に基づいた言葉の乱用だということの暴露である。 この側面に限定していえば、おそらく大半はソーカルらのいうことが正当なのだろうと思われる。読者たる私がよく分からない現代科学上の事柄に関して、「おそらく正当なのだろう」と思うのは、ただ単に、著者たちが専門の科学者(物理学者)で、批判される側が自然科学については素人だから、というだけの理由ではない。もしそれだけの理由でそう考えるなら、それは「専門家の権威」を無批判に鵜呑みすることになり、権威主義的メンタリティーのあらわれということになる(本書の読者の中には、そうした読み方をする人も結構いるだろうし、本書が少数の科学者だけでなく広い範囲の読者に読まれ
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