市街劇「地獄の門」のテーマは、「(美術)史の語り直し」である。 まず、このテーマは昨年の市街劇「怒りの日」から連続していることを明記しておく。「怒りの日」では、近代以前のいわきの歴史へ遡り、そのなかで出会った「中座された歴史」を召喚することで、「ありえたかもしれない歴史」を描こうとした。被災地を舞台にした市街劇で、あえて現在ではなく過去、しかも近世、中世へと遡ったのは、おおよそ近代に起源が求められる震災後の諸問題の袋小路を、それ以前の「ありえたかもしれない歴史」の想像力によって相対化しようと考えたからだ。対して今回は、私たちにより近い、近現代(美術)史の「語り直し」を試みている。 ■ まず、あなたたちを迎えるのは《photo sculpture 地獄の門》(井田大介)である。「憂の国」の入口としての地獄の門、つまり「怒りの日」では、袋中上人であったり、名僧徳一であったり、「死人田」であった