「名を正す」とは『論語』のなかでも最も有名な話であろう。物事をその正確な名前で呼ばないことこそが世が乱れる根本である、と孔子は喝破したのであった。最近の国会でのやり取りを聞いていてこの言葉を思い出した。 自衛隊がPKO(国連平和維持活動)に派遣されている南スーダンでは内戦が再燃し、紛争継続地には派遣しないとする「PKO参加5原則」が完全に崩れているとの指摘が、かねてなされていた。この点を国会で突かれた安倍晋三首相は、「衝突はあったが戦闘行為ではない」という趣旨の答弁をした(10月11日)が、端的に言って意味不明である。 意味不明ではあるが、これは実に見慣れたまことに「日本的」な光景でもある。大東亜戦争当時、大本営は「全滅」を「玉砕」と呼び換え、「撤退」を「転進」と呼び換えた。この呼び換え癖は敗戦を経ても治らず、「敗戦」そのものが「終戦」と呼び換えられた。だから今も、底が抜けて放射能が溶け込