「あなた、どこの国の人?」 上野の東京都美術館、東京藝大の卒業制作展。ラッパー、着ぐるみ作家として活動する田村なみちえさんと記者が話をしていると、ある中年男性が割り込んできた。その人差し指は彼女に向けられている。 「うーん…日本…ですかね…。初対面で誰にでもそうやって聞くんですか?」 初対面、それも第一声で相手に国籍を聞くこと。その不躾さをやんわりと指摘した彼女に、男性は一方的にまくし立てた。 「外国に行ったら、国を聞かれるのなんて当たり前でしょう!自分の国に誇りを持てばいいじゃないか!」 小声で何かをブツブツと呟き、彼女の作品の前から立ち去っていった男性。 その後も、他の学生に話しかけ「出身を聞いただけで、バカにされたと思って怒ったんだ、あの人は」と、苦情を訴えるように話す声も聞こえてきた。 「勝手に、私が自分の国を恥じていることになっていましたね…。昨日もああいう人が来たんですよ。私が