PR誌「ちくま」11月号より橋本治さんの連載を掲載します。前回にひきつづき、現在進行形の「闘病記」です。 入院してから三カ月になりますが、前号でも言ったように、九月末の私は「転院」ということを繰り返して、まだ病院におります。抗癌剤治療を受けているわけでもない私は、十六時間強の手術で癌をすべて摘出し、その後に「念の為」の放射線照射、後は「治るだけ」だったんですな。新たな転移が見つかったわけでもない。それなのに、なんでこんなに病院から出られないか? 私の初めの入院予定は「約一カ月」だったのに、それを二カ月以上もオーバーしている。大手術の後始末は相応に大変ですが、人はそれぞれで、治り方もそれぞれということなんでしょう。 私が退院出来ないでいる理由は、「食べ物をみ込む力が衰えている」ということです。早い話、「唾を飲み込んでみて。はいゴックン」と言われてもそれが出来ないという。なんとも情けない。 (