現在、大ヒットを続けているクリストファー・ノーランの新作映画『TENET』。ノーランといえば、短期記憶を失う男が主人公のサスペンス『メメント』において、その卓越した構成力と演出で一躍映画界のスターとなった人物だ。その後の大型作品『インセプション』でも、ノーランは「映画と時間」の関係に挑み続けてきたことがわかる。そしていま、“時間逆行映画”を標榜する『TENET』が全国公開中だ。多くの人が「一度観ただけではわからない」と口々に語るこの映画、一体 スクリーン上では何が起きているのか? 本作に魅了された物理学者・橋本幸士が独自の視点で解説する。 世界興行収入が300億円を突破した(日本公開2020年9月の一ヶ月後)ことからも分かる、全世界の映画ファンを魅了している映画『TENET テネット(以下、TENET)』。一人の物理学者である僕も観て来た。一言でいえば、タイムリバーサル(時間逆行)を肉体で