新潮社の「yom yom」第5号を買ってきたら、「岸本佐知子のヘンな部屋」という小特集が組まれていた。(1)翻訳、(2)日記エッセイ、(3)豊崎由美によるブックガイド、の3本立て。そこで(1)翻訳として載っていた、ミランダ・ジュライという作家がすごかったのである。 《わたしは自分の知ってる泳法をすべて教えた。バタフライはすごかった、あんなのたぶん誰も見たことがない。》 今回、岸本佐知子が訳したのは、「水泳チーム」と「その人」の2本。とくに前者にはたまげた。海も湖もプールもない町で、泳ぎ方を教える女の子の話。しかも生徒は80歳を越えた老人。 ちょっと変わった女の子の一人称、とか説明すると無用な偏見が生まれるかもしれないが、そんなところをかるがると越え、最初の数行でしっかり特異な世界が立ち上がり――、とか書いても何も伝わるまい。「水泳チーム」が7ページ、「その人」が4ページしかないので、もう全