「核兵器攻撃による被害を避けるためには唯一、核兵器の廃絶しかない」。弾道ミサイル発射など「有事」の発生に備えた「国民保護計画」を巡る議論で、広島市が国の意図と一線を画す想定を打ち出したのが2007年のことだ。それから10年。当時、専門部会の部会長として市の計画の「核兵器攻撃」に関する部分をとりまとめた被爆者で、広島大名誉教授の葉佐井博巳さん(86)=原子核物理学=に想定の意味をあらためて聞き、今こそ被爆地から発信すべきことを考えた。(桑島美帆、山本祐司) ―広島市の置いた専門部会の狙いは何だったのでしょうか。 被爆地は、核兵器廃絶を追求している。それなのに核攻撃は起こるという前提で国民保護計画を作れば、核兵器を認めることになる。そもそも核攻撃から逃げるすべはなく、使われてはならないのだ、と発信が必要だった。 専門部会では主に、空中と地上で核爆発した場合の被害を試算。広島型原爆の60倍の威力