全国チェーン展開する有名飲食店の社長が、日課の掃除中に突如銃殺される……あまりに大胆不敵な犯行ながら、逮捕には9年も要した。逮捕された容疑者は特定危険指定暴力団、工藤會系の組員だった。“最凶暴力団”とも言われる工藤會とはどんな組織なのか。ジャーナリストの鈴木智彦氏がその内幕をレポートする。【前後編の後編。前編から読む】 工藤會は暴力団社会の異端児だ。 多くの暴力団は国家権力の強大さを熟知しており、当局とガチンコでぶつかろうとはしない。暴力を使って恫喝し相手を容赦なく殺しても徹底的な反社会的存在にはならず、最後の一線で権力や世論と迎合する。市民社会の中で無軌道に暴れ、拳銃をぶっ放し、抗争事件を起こしても、一般人を巻き込まないよう、彼らなりに気を遣っている。 「ヤクザは法を犯せど非道はしない。そもそも国を相手に喧嘩をすれば絶対に勝てない」(某独立団体トップ組長) 彼らの迎合は生き残るための智恵