2010年9月29日のブックマーク (1件)

  • 幾何学的空間と生きられる空間

    (注記: これは、静岡大学人文学部『人文論集』第45号の1[1994年7月30日発行]に掲載されたものです。ただし、活字になったものと一部異なる可能性がありますので、ご注意ください。) はじめに 「ここはどこ? 私はだれ?」 -- これは、しばしば小説などに登場する記憶喪失患者(仮にEとしよう)が発する問いである(1) 。それに、「いまは何時? 今日は何月何日? 今年は西暦何年?」という問いを付け加えてもよい。それが、実際の記憶喪失患者の状態をうまく伝えているかどうかはいまは問うまい。興味深いのは、この患者Eの問いの発し方である。彼は「ここ」が例えば某大学の研究室であること、あるいはどこかの監獄か精神病院であること、なぜこんな所にいるのか、を知らない。それについての記憶がない。彼は「私」が例えば某大学の教員であること、あるいは「呉一郎」という名をもつ人物であること、どこで生まれ、どこに住ん