Tweet Photo Link 村上春樹の小説『1Q84』に天吾という主人公が登場する。天吾は小説を書いているが、新人賞をとれない。文章の技術は優れているのに「何か」が足りないのだ。ある日、女子高生が『空気さなぎ』という小説で新人賞に応募してきた。文章は荒削りだが、人を惹きつける「何か」がそこにはある。編集者は天吾に『空気さなぎ』の書き直しを依頼した。 天吾が推敲する場面。 これ以上は増やせないし、これ以上は削れないという地点 次におこなうのは、その膨らんだ原稿から「なくてもいいところ」を省く作業だ。余分な贅肉を片端からふるい落としていく。削る作業は付け加える作業よりはずっと簡単だ。その作業で文章量はおおよそ七割まで減った。一種の頭脳ゲームだ。増やせるだけ増やすための時間帯が設定され、その次に削れるだけ削るための時間帯が設定される。そのような作業を交互に執拗に続けているうちに、振幅はだん