造形思考 パウル・クレー 新潮社 1973 Paul Klee Das bildnerische Denken 1956 [訳]土方定一・菊盛英夫・坂崎乙郎 ロラン・バルトは「芸術作品は歴史がみずからの満たすべき時間をすごしている様式である」と言った。ウンベルト・エーコは「芸術作品は歴史と心理が異なる情報を受信した者が描いたテクストである」と『記号論』(講談社学術文庫)に書いた。 どちらも当たっている。どちらも当たっているが、この2つの定義にともに適う作品を描き、かつそのことを自身で言葉によって論証し、さらにそのことを後世の青年青女たちに「方法」として送信したアーティストはというと、そんなにいない。ぼくはパウル・クレーがその稀な一人だったと思っている。それなのに、クレーについてはろくな見方をされてこなかった。その絵はみんなから愛されてはいるが、その瞠目すべき方法の提示が受けとめられていない
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