川崎中央卸売市場北部市場(以下、北部市場)には、一般に開かれたエリアがある。乾物や調味料、惣菜や輸入食品などを取り扱う食料品店や日用品店が立ち並ぶ、北部市場内の関連商品売場棟(以下、関連棟)。その一角にある「調理室池田」が、今回の目的地だ。都心から電車とバスを乗り継いで、スマホの地図を頼りに市場へと向かう。 市場といっても、北部市場は本来、飲食店や小売店といった事業者のための中央卸売市場だ。当然食べ歩きをしているような人は見かけないし、青果棟をはじめとするほかのエリアには、原則として入場できない。朝8時から一般客の入場が許可されている関連棟に足を踏み入れてからも、カフェがあるような雰囲気は見受けられない。精肉店や乾物屋など市場では馴染みの看板に並んで「調理室池田」の看板はあった。 店内にはコーヒーとパンの焼ける香ばしい空気が満たされ、白を基調とした洗練された空間が広がる。市場で働く人や常連