日本の外交戦略に揺らぎが生じている。直接の引き金は二つ、存立危機事態に関わる日中対立と、トランプ体制になってからのアメリカ外交の不安定性である。今現在、日本は両大国から同時に不確実性を突きつけられた形となっている。こういう話題になると得てして「米中どちらに寄るか」という二択に矮小化されがちだが、そもそもどちらかを選ばなければならないという話でもないだろう。二択を迫られているという錯覚を疑うところから始めたい。 二つの大国、二つの不安中国の問題はわかりやすい。言論統制、少数民族への抑圧、香港への圧力、ロシアによるウクライナ侵攻へのロシア寄りの態度と、自由民主主義の価値観とは構造的に相容れない体制であることは国際社会で広く認識されている。フリーダム・ハウスは長年にわたり中国を「非自由(Not Free)」と評価し続けており[^1.1]、EUは「デリスク」(脱中国依存)を公式の政策目標として掲げ

