[1]千尋はなぜ豚が両親ではないと見抜けたのか? 『千と千尋の神隠し』で始まった21世紀(上) 浅羽通明 冒頭、登場するヒロイン、10歳の少女千尋は、それまでずっと宮崎駿監督のアニメを特徴づけてきた『風の谷のナウシカ』のナウシカ、『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスのような、きりっと引き締まった爽やかな美少女ではない。 むろんこれは宮崎監督の、きわめて意図的な造形だ。当時、監督が観客へ送った公式メッセージにはこうある。 「千尋のヒョロヒョロの手足や、簡単には面白がりませんよゥというブチャムクレの表情」と。そして千尋が、そうしたいつも不機嫌そうなわがまま娘なのは「かこわれ、守られ、遠ざけられて、生きることがうすぼんやりにしか感じられない日常の中で、子供達はひよわな自我を肥大化させるしかない」結果なのだ。 「かこわれ、守られ、遠ざけられて、生きることがうすぼんやりにしか感じられない」のは